2010/10/7 (Thu) at 10:48 pm

映画|スプライス|Splice

バイオ科学者が人間と他の生物のDNAを混合し、新生物をつくっちゃうSFバイオホラー映画。エイドリアン・ブロディサラ・ポーリーデルフィーヌ・シャネアックヴィンチェンゾ・ナタリ監督。制作ギレルモ・デル・トロ。2009年。

スプライス / Splice DVDDVD画像

バイオ会社のラボで働くカップル科学者が、複数の生命体のDNAを混合して新生物をつくった。なんて説明すればいいのかな。デカミミズみたいなぐにゅぐにゅ生き物は、みためちょっときもちわるいけど、見ようによってはかわいいといえないこともない。ここらへんの特殊効果はなかなかすごい。

研究の成果を見た会社の女社長は「えらいえらい」と褒めてくれたんだが、その先の話は科学者カップルにとっておもしろくない内容だった。「この成果を使って、お金儲けになるような新プロティン開発をそろそろやってください」といわれて落胆する。

会社が彼らに投資をしているのはいうまでもなくビジネス目的であり、ゲテモノ動物園をつくりたいとか、深遠な生の神秘に触れてみたい、なんていうのとはちがうのである。対して、科学者というのは金儲けなんか興味はないから両者のあいだには深い溝がある。

科学者カップルは「あー、つまらない」と文句をいい、悩んだ末、会社の方針に逆らって勝手なバイオ実験を行う。それは「人間のDNAを他の生命体とくっつけたらナニができるのか」という話だが、これは会社に逆らうばかりでなく、倫理的に許されない犯罪行為でもあるのだが、科学者としての誘惑に勝てずそれをやってしまう。現代版フランケンシュタイン。

さて、そこから出てきたのは世にも奇妙な生き物であった。この造型を文章で説明するのはむずかしい。全身肌色。二足歩行。顔は昔の映画のエイリアンぽい。ものすごく成長が早い。シッポがはえてて、大人になったらこれが毒針みたいな攻撃ツールになる。かわいい。といえないこともない。このページの下のほうに画像があります。

ふたりはそれを隠してペットのように育て、ラボに置いとくのはまずいのでこっそり外に運び出す。やがて生き物は高度な知性を見せ始める。言葉はしゃべれないんだが、人間がいうことは理解できるし、アルファベットも理解できるようになる。ふたりはその新生物に服を着せ、ドレンちゃんと名づけていっしょに住み始める。

トレイラー動画

Splice (2009) trailer

子供時代のドレンちゃんはこんなふうにつくった↓

Splice Special Feature Clip

感想

新生物の造型その他、特殊効果のパートはいいんだけど、肝心要の、映画の根幹を支えるところがつまらないなあとおもいました。

新生物を家に連れてきてお化粧をしてあげるとか、音楽を聴いて笑ったりとか、そういう演出が陳腐ではないですか。新生物をおっかなびっくり育てているというより、生活習慣が異なる国から養子をもらってきたところみたいで、スケール小さい!なにかこう、深遠なテーマがかんじられない!

バイオエンジニアリングされて産み出されたこの新生物を、人間の美意識/尺度/言語という型にはめすぎている。自分たちが理解できる安全圏の型にはめてしまうことに、なんの違和感も持たない科学者カップルがdumbバカに見えてしょうがないです。

私がおもしろいと思えるものの例を挙げるなら、たとえば『バトルスター・ギャラクティカ』のサイロンです。サイロンは元々人間がつくったロボットなんだけど、それがある日、反乱を起こして人間に敵対する。

あのドラマの中で、わるもんサイロン(あくまで人間から見ての『わるもん』ですが)のキャヴィルが「なぜぼくは人間と同じ感覚しか持てないんだ。こんな狭苦しい肉体に囚われ、こんな不完全な言語でしか自分を表現できないなんていやだ」と嘆くシーンがありました。実際の台詞は違うかもしれないがそんなような意味のことをナンバー6にしゃべるシーンを覚えています。あれはとても印象的でした。サイロンは人間に似せてつくられているから、キャヴィルはその点にがまんがならないのですね。

サイロンとこの映画のドレンちゃんはあらゆる意味で別物だけど、人間がつくった知性体という点で似てるぶぶんもあるとおもう。もしバイオエンジニアリングによって新生物が産まれ、人間が彼らとコミュニケーションしようとしたらば、サイロンのhybridがしゃべる言葉の洪水を理解しようとするような忍耐を要するのではないか。あるいは、既知の言語とはまるでちがうコミュニケーションレイヤーを構築する必要があるのではないか。

私はこの映画を観たら『BSG』のことを思い出し、上に書いたような連想が頭に浮かんだので、ゆえに、「アルファベットを理解できるからすごい」とか「音楽を聴いて笑うのがかわいい」というような演出に大きな失望を覚えたのです。

んー。

てか、そんなに深く考えて観るほどのもんではないのかもしれないなあ。ただのゲテモノ映画だと思って観ればいいのかも。特殊効果はよくできてたし。特にさいしょのほうとか。

この映画は邦題『スプライス』にて、2011年お正月に劇場公開予定だそうです。

ヴィンチェンゾ・ナタリ監督のインタビューがありました↓

画像

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原題: Splice
別題: Splice: Experimento mortal
Hibrid
Химера
Deney: DNA
Hübriid
Istota
Nouvelle espèce
Splice
Splice - A Nova Espécie
Splice - Das Genexperiment
Splice - Mutante
Splice: experimento mortal
邦題(カタカナ): 『スプライス』
制作年: 2009年
制作国: カナダ/フランス/アメリカ
公開日: 2009年10月6日 (スペイン) (Sitges International Festival of Fantastic and Horror Cinema)
2010年1月22日 (アメリカ) (Sundance Film Festival)
2010年1月30日 (フランス) (Gérardmer Fantasticarts Film Festival)
2010年2月27日 (イギリス) (Glasgow Film Festival)
2010年3月13日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest Nights Munich)
2010年3月14日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest Nights Stuttgart)
2010年3月20日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest Nights Berlin)
2010年3月21日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest Nights Hamburg)
2010年3月26日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest Nights Nuremberg)
2010年3月27日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest Nights Cologne)
2010年3月28日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest Nights Frankfurt)
2010年4月28日 (イギリス) (Sci-Fi-London Film Festival)
2010年5月30日 (アメリカ) (Seattle International Film Festival)
2010年6月3日 (ドイツ)
2010年6月4日 (カナダ)
2010年6月4日 (アメリカ)
2010年6月13日 (イタリア)
2010年6月24日 (ロシア)
2010年6月30日 (フランス)
2010年7月1日 (韓国)
2010年7月23日 (オーストラリア) (Melbourne International Film Festival)
2010年7月23日 (イギリス)
2010年7月30日 (スペイン)
2010年8月12日 (オーストラリア)
2010年9月16日 (香港)
2011年1月8日 (日本)
imdb.com: imdb.com :: Splice
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
アートディレクション
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞
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    スプライスSPLICE/2008年/カナダ・フランス毒親と、かわいそうな子供。 毒親というのは、ざっくりいうと子供の成長(特に反抗期)を認めず、コントロールすることによって自分を守ろうとする親のことです。エルサ(サラ・ポーリー)のドレン(デルフィーヌ・シャネアック)に対する態度は、毒親そのものだなあっと思 ...

    2011/3/23, 9:00 AM

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