2009/2/6 (Fri) at 2:58 pm

映画|下宿人|The Lodger: A Story of the London Fog

19世紀ロンドンの『ジャック・ザ・リッパー』事件を題材にした、マリー・ベロック=ローンズの古典小説を、アルフレッド・ヒッチコックが映像化したサイレント映画。1927年。

下宿人 / The Lodger: A Story of the London Fog DVDDVD画像

最新のリメイク版『下宿人|The Lodger (2009)』を見る前にこちらも見てみました。80年前のサイレント映画なので画質ズタボロ。いまの映画とはなにもかもがちがうので忍耐が必要ですが、たまにはこういうのもおもしろいですよ。俳優のおおげさな演技とか、ジャジャーンと鳴る音楽とか。もちろんヒッチコックらしい工夫心にあふれたつくりも。こんなかんじ↓

The Lodger (1927)

最後までネタバレの物語紹介。

ロンドンで『アヴェンジャー(復讐する者)』と名乗るシリアルキラーが出現。毎週火曜日の夜にブロンド美女を殺すっていうんで、人々はおののいた。発見される死体にはいつも『アヴェンジャー』のメモがついてて、典型的な劇場型犯罪者。

とある下宿屋に怪しい借り手が現れる。物静かな雰囲気の青年が「部屋貸します」の看板を見てフラリとやってきたが、マフラーで半分顔を隠して黒ずくめの衣装はじつにブキミ。下宿屋のオカミは噂のアヴェンジャーを思いだしてゾゾゾとしたが、それに合わせてジャジャジャーンとこわい音楽が流れる。この登場シーンはちょっとドラキュラ伯爵みたい。あい、あむ .... ど、ら、きゅ、らーー、みたいな。

映画は『下宿人 = アヴェンジャー』というノリで進んでいく。彼がじっさいに殺人をする映像はないけれど、まわりのひとたちがびくんとしたり、こわい音楽が流れたりするので、映画を見てる私たちに「コイツがそうなのかー」と思わせる演出が続く。彼は部屋に入るなり、ひとりになると黒いカバンをだいじそうに隠した。その意味は後半に明かされます。

ところで下宿屋にはデイジーていうカワイコちゃんの娘がいる。いつもニコニコのブロンド美人。彼女にはジョーっていう恋人がいる。ジョーは刑事なんだけど、そのわりには船越英一郎似のチャラけたアンちゃんで、いつもデイジーにちょっかいをだしている。オカミサンがそれを見て笑っているのがほほえましい。ふたりは公認カップルなのだ。

そこに素性不明の下宿人が現れたらトライアングルが発生する。下宿人男はチト変人ぽいが、なかなかのハンサム男であり、デイジーをひとめ見るなり気に入ってアレコレちょっかいをだし始める。彼女のほうもまんざらではないようす。うふん。イチャイチャ。ジョーはムカムカー!

というホームドラマ的場面が続きつつ、相変わらず毎週火曜日になるとギャルの死体が発見される。人々はこわがっている。ジョーはアヴェンジャー捜査の担当になったといってやるきまんまんだが、あいかわらず下宿人が目障りである。

夜。下宿人がどっかに行くのを目撃したオカミサンがアワワとパニクる。そこらへんからますますコイツが犯人なのだな〜というかんじになってきて、知らないのはデイジーちゃんだけというムードになってくる。

ジョーは捜査令状を持って下宿人を捕まえた。部屋を調べたら、黒いカバンが隠してあり、中から銃、地図、最初の被害者の写真が出てきた!下宿人はオロオロ!地図には殺人ポイントがマークしてある!問答無用で手錠をガチャン。デイジーちゃんは「なにかのまちがいよおおおお」と泣く。

デイジーはジョーのすきを突いて下宿人を逃がす。自分もダーと走って暗闇に消えた。ふたりは街灯の下で落ち合った。下宿人は手錠をはめられたままで、悲しそうに告白した。彼はじつはアヴェンジャーを捕まえようとしてたそうである。

アヴェンジャーの最初の被害者は下宿人の妹だった。ショックで母親は死亡したそうな。母は自分の息子に「あんたの妹のカタキを討つんだよ」といい残した。その約束を守るために、彼は人知れず単独捜査をしようと考え、事件発生現場の近くに部屋を借りたそうである。

というのが真相なんだけど、イキリたってるジョーはこの話を信じてくれそうにない。ふたりは逃げるしかないんでしょうか。下宿人はガクガク震えている。優しいデイジーちゃんは「とりあえずあったまらなくちゃ。ブランデーを飲みにいきましょう」とノーテンキなことをいい、ふたりはバーにいく。手錠を隠しつつ、こそこそとイッパイ飲んだ。

酒場の客たちの目にはじつに怪しいカップルである。ひとめを避けるようにすぐにふたりは出ていったが、入れ替わりにジョーが飛び込んでくる。人々はさっきのアレが!と気づいて、ウワーと追いかける。「アヴェンジャーをつかまえろー」と魔女狩りのような様相になる。

ところが、ジョーは警察本部と連絡して、なんと別の場所でアヴェンジャーが現行犯逮捕されたという情報を得た。下宿人は無実だったと彼も信じるようになり、必死で追いかけた。ほっとくと人々にリンチ責めされちゃうから。

下宿人はひえええと逃げるが、柵を乗り越えようとしたところで手錠がひっかかって逃げられなくなる。うまい演出!もうだめータスケテーとなったところにジョーが遅れて登場。彼は恋敵を救ってあげました。ふぅ。

下宿人は入院したが、やがてげんきになった。デイジーちゃんは完全にこっちに乗り換えるみたいである。下宿のオカミとオヤジも彼の無実がわかったので祝福ムード。この最後のシーンで、オカミサンが「あんた、歯ブラシを忘れていったヨ」といってソレを渡してみんなはハハハという、堺正章と森光子のような小ネタがあるんだけど、歯ブラシってなんか意味があるんですかね。私はよくわからなかったんですが。なんかありそう。気になるなぁ。

ラストは心温まるラブシーンでおしまい。めでたしめでたし。

リメイク版『下宿人』のレビューはこちら↓

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邦題(カタカナ): 『下宿人』
制作年: 1927年
制作国: イギリス
公開日: 1927年2月14日 (イギリス)
1928年6月10日 (アメリカ) (New York City, New York)
1992年4月 (ドイツ)
2010年11月17日 (フランス) (再リリース)
imdb.com: imdb.com :: The Lodger: A Story of the London Fog
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
編集
アートディレクション

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