映画|ザ・ダーク|The Dark
ウェールズの伝承『アヌゥン』の自殺岬にとり憑いた拷問少女の自縛霊。断崖絶壁からジャンプする羊たち。監督ジョン・フォーセット。2005年イギリス。
イギリス、ウェールズの海岸沿いの草原に建つボロ家で、家族3人が少女のオバケにヒィヒィいわされるお話。冷たい風がピューピュー吹いて、草原の先に断崖絶壁がある。ちょっと足をすべらせたら墜落オダブツのデンジャラスな雰囲気。はるか下には重い波がザブーンと押し寄せるのが見えて吸い込まれそうな怖さ。荒涼寂寞とした風景がホラーにぴったりです。
この場所に母と娘がドライブしてやってきた。母の夫、娘のパパがこの寂しい家でひとりで住んでいて、ふたりは愛する家族のためにはるばるこのド田舎にやってきたのだ。久しぶりに再会した3人は大感激だが、なにやらワケアリのようでもあり、母娘の雰囲気はギスギスだったりする。夫はそんなふたりを気遣うようであり、いうなれば「いろいろあったけど心機一転頑張りましょうよ」ムードである。がんばってくれと声援を送りたくなるが、この映画はホラーなのでウギャーな事件が起こっちゃうのであった。
娘が海で溺死。残された妻と夫は悲しみに突き落とされた。夫はポリスといっしょに必死の捜索をしたが死体は見つからず、妻は罪悪感に駆られて発狂寸前である。辛い!フラフラしてたら不思議なビジョンを目撃した。それはかつてこの家で不幸な死を遂げた少女の亡霊であり「あなたの娘はまだ生きている」と告げた。狂乱ママはすがるような思いでその言葉を信じた。狂ったのかとなじられてもひとりでてがかりを捜した。娘を返して!悲痛な思いで単独調査をしてるうちに、かつてこの家で起きた陰惨な事件が明かされていく。
近くの断崖岬には古びた石碑が建っていた。ウェールズ語で『アヌゥン(Annwn)』と刻まれている。これは死後の世界を意味するものであり、この場所が天国への入り口であると信じた人々が大昔にいたんだそうな。そうか。でもそれと少女ゴーストはどんな関係があるんでしょう?サラちゃんはなぜ死んだの?!
Spoiler Alert !!!!
ネタバレ注意!!
ネタバレオッケーな方のみこの下をスクロールしてご覧下さい↓
50年前。かつてこの家には羊飼いの男が娘とふたりで住んでいた。娘は病弱で早死にした。悲しみの父は娘が『アヌゥン』に行くと信じて死体を海に流したが、彼は諦めきれず、死んだ娘を復活させることを計画した。村の人たちを呼んで説教し『アヌゥン』伝説を信じさせ、集団自殺をさせたのだ。やがて娘は海から戻ってきた。だが羊飼いは毎夜の如く少女を拷問するようになった。羊の屠殺場につくった拷問イスに拘束して痛みを与え続けた。ある日、男は娘に断崖から突き落とされてオダブツとなりました。少女の名はエブリルという。
という事件が50年前にあって、サラちゃんは日本風にいうとエブリルの自縛霊に導かれて溺死しちゃったと思われる。「思われる」というのは、この映画の後半は狂乱ママの幻なんだか現実なんだかわからないシーンが連続するので、いろんな解釈の仕方ができるからなのだ。少女拷問のシーンはスプラッター度は高くないけれども子役の演技が迫真であり、じつにかわいそうでおぞましい。そして狂乱ママが見てる幻の中で、おそらく日本風にいうとあれは三途の川ってヤツじゃないかと思うんだが、彼女はエブリルをダッコして海に墜落して死んだらば、深い霧の中で覚醒した。
"Mommy's coming. Mommy's coming. Mommy's coming."
と叫んで娘を捜し回り、やっとサラを見つけたらば厳しい口調で責められた。50年前にエブリルがヤラレたやり方でママは拷問された。サラが睡眠薬自殺を図ったときの記憶が出てきて意識は混濁。相手がサラなんだかエブリルなんだか判然としない。ひぃいいいいとチビったママは罪悪感の虜であり「ママにもういっぺんチャンスをください」とお願いしてみたが、娘は許してくれません。このシーンの子役の演技はすばらしい!
"This is where all of us sick little sheep have the filth cut from our heads."
再び意識を失ったママは砂浜に流れ着いた。起き上がったらサラが目の前を駆けていく。死んだはずの娘はパパに抱かれていた。「ヤッター。サラを助けることができたんだ!」と大感激で走り寄ったら、彼女は相手に触れることができない。こんどはママがオバケになってたのでした。愛する夫が「ママはおまえを助けるために死んだのだ」と告げるシーンを目撃した。サラは「ママが好きだった」と告白した。悲しいわん。エーン。
このまま悲しみのエンディングと思われたが、最後にtwistがもういっちょうきた!パパが娘と信じたのはじつは50年前に死んだエブリルだったのである。入れ替わっちゃったわけですね。不遇な少女時代&オバケ時代を送ったエブリルだったが、50年後に別人として復活し、優しいパパに巡り会えてニンマリである。一方、犠牲となった狂乱ママは岬にとり憑くオバケとなった。いつか彼女は悪霊と化して、人々を海に引きずり込むんだろうなと余韻を残して終了。おもしろかった!
後半クライマックスシーンはいろんな解釈ができそうだけど、私はこんなふうに見ました。辛い死に方をすると成仏できなくて悪霊になる、元は善良なひとだったとしても悪霊はいつかevilな存在に変化して、生きてるひとたちに不幸を与えるという設定はオバケのデフォルトなので、そういうことかなと思いました。
ウェルシュムードの雰囲気がよく、キャスティングもよい!いちばん良かったのはエブリルちゃんを演じたアビゲイル・ストーンです。彼女の存在感はすごいな。また、優しいんだけどついついテンパッちゃうヒステリーママ演技のマリア・ベロもよかった。エブリルちゃんが拷問されてるとこはほんとにかわいそうで泣けちゃいました。
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The Dark | |
The Dark A múlt titka Karanlik La oscuridad Na Escuridão Pimedus Tma | |
『ザ・ダーク』 | |
2005年 | |
ドイツ/イギリス | |
2005年5月 (カナダ) 2005年5月12日 (フランス) (Cannes Film Market) 2005年9月28日 (スペイン) 2005年10月26日 (フランス) 2005年10月28日 (イタリア) 2006年1月26日 (ドイツ) 2006年3月2日 (ロシア) 2006年4月7日 (イギリス) 2006年4月11日 (アメリカ) (DVD) 2006年6月9日 (イタリア) (再リリース) 2006年6月22日 (香港) 2007年1月1日 (日本) (DVD) | |
imdb.com :: The Dark |
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- Stephen Massicotte :: スティーヴン・マシコッテ [imdb] (screenplay)
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- Sophie Stuckey :: ソフィー・スタッキー [imdb] (Sarah)
- Maurice Roëves :: モーリス・ローヴ [imdb] (Dafydd)
- Abigail Stone :: アビゲイル・ストーン [imdb] (Ebril)
- Richard Elfyn :: リチャード・エルフィン [imdb] (Rowan)
- Casper Harvey :: キャスパー・ハーヴィ [imdb] (Young Dafydd)
- Gwenyth Petty :: グウェニス・ペティ [imdb] (Librarian)
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