2010/8/27 (Fri) at 4:28 pm

映画|スケリグ|Skellig: The Owl Man

少年が世にも不思議な『なにか』を発見してびっくりするファンタジー映画。原作はデイヴィッド・アーモンド著『肩胛骨は翼のなごり』。ティム・ロスビル・ミルナーケリー・マクドナルドジョン・シムスカイ・ベネット。監督アナベル・ヤンケル。2009年。

スケリグ / Skellig: The Owl Man DVDDVD画像

父(ジョン・シム)母(ケリー・マクドナルド)息子(ビル・ミルナー)の3人家族が、アパートからボロ家に引っ越す。もうすぐあかちゃんが産まれるんで、広い家のほうがいいからそうしたってことだが、これがとんでもなくオンボロなので、息子のマイケルくんは落胆気味。パパは家族をげんきづけるように「ちゃんと修繕すればきれいになるよー、だいじょうぶだよー」とスマイルする。そんなパパを複雑視線で眺めるマイケルくんであったが、あかちゃんが産まれ、妹ができたらすごくうれしくなり、彼もたのしいきぶんになってくる。わーい。かわいいなー。うれしいなー。

ママとあかちゃんは当分病院で過ごすので、パパは「そのあいだに家の修繕をするぞ!ピカピカにしちゃうぞ!」とやるきまんまんとなり、マイケルくんも手伝う。そうこうやってるうちに、マイケルは家の敷地内にあるボロ小屋にへんなもんを見つけてびっくりする。その小屋はいまにも崩れてしまいそうなので、「危ないから入っちゃだめ」といわれたんだが、そういわれると男の子というのは探検したくなるものであり、そーっと侵入してガラクタを眺めて遊んでいたら、その奥に、世にもみすぼらしくて汚らしい男(ティム・ロス)が横たわっているではないか。

男はカタツムリを食べ、臭いゲップをした。リウマチのせいで痛くて動けない。一日中汚い場所に寝転んでいる。その姿はホームレスそのまんまなのだが、なぜかマイケルくんはその男が気になってしまうのであり、食べ物を運んでやったりして友達になる。そいつはスケリグと名乗る。彼の背中には翼の残骸らしきものがあるんだが、その汚い姿は絵本の天使とはぜんぜん違う。最初マイケルくんは「せむし男か」と思ったくらいである。彼はいったいなんなのでしょう。

ところで、マイケルの家の隣には、ミナちゃん(スカイ・ベネット)という、へんな少女が住んでいる。彼女は学校に行ってない。母親と二人暮らしで、母親が勉強を教えてくれるそうな。彼女は学校に通うマイケルをコバカにするようなことを述べ、得意そうにウィリアム・ブレイクの詩を引用したりする。

マイケルはこの変わり者少女といつしか仲良くなり、彼女にスケリグを見せてあげる。ふたりは大人たちにナイショで何度も会いにいき、食べ物をあげたり、翼を洗ってやったりとおせっかいを焼く。スケリグはいつも無愛想で「もうほっとけ」とかいうんだが、やっぱり親切にされるとうれしいみたいで、だんだんげんきになってくる。マイケルとミナはその経過に満足し、ふたりは秘密を共有してますます仲良くなる。

トレイラー動画

Skellig (2009) trailer

感想 - 原作と比べて

これの原作『肩胛骨は翼のなごり』がおもしろかったので、どんなもんかえと観てみましたよ。前半パートはかなりいや。もう観るのをやめよかなーと思ったくらい。後半になったら少しよくなりました。全体として微妙。やっぱ小説で読むほうがずっといいなーとおもいました。ティム・ロスその他キャストのみなさんはよいのですが、演出が私の好みとは合わなかったようです。

いろいろありますが、いちばん幻滅したのは、最初のあたりのマイケルの学校のシーン。机の中から虫がウジャーと出てくるところです。あれってホラー映画によくある手法ですが、この映画では、ああいう調子で『虫』を表現してはいけないと思うのですよ。

原作では、小さな生き物全般(フクロウとかネコとかネズミとかゲジゲジとか)の生態が精妙に描かれていて、マイケルとミナがつぶさにそれを観察するあたりがおもしろいのです。彼らは「かわいいなー」と思って生き物たちを見るんだけど、ときにはネコが鳥の雛を食べちゃったりすることもあり、そういうのを眺めて自然を学ぶのです。小説の中ではウィリアム・ブレイクの詩が何度も引用されて、それらの意味が補強されます。

映画のなかでスケリグがフクロウからエサをもらって食べるシーンがありますが、あれは原作にもありますが、上に述べたような伏線があって初めて、あのシーンに意味を持たせることができるのではないでしょうか。スケリグって自然の生き物の循環のなかで生きているんだなーと思えてくるのです。それはとても美しくて、超絶的で、不思議な存在なのです。

そして、このような物の見方、生き物たちを通じて現象事物を捉える見方というものをマイケルに教え、彼の目を開かせるのが不思議少女ミナちゃんです。映画ではそこらへんが強く感じられなかったけど、小説を読むと彼女の存在感がすごくある。小説では、ミナちゃんはマイケルに詩を聞かせたり、絵を描くことは観察力を高めることに役立つのだよ、というような話をして彼を導きます。少年は学校で教わらないそれらの知識に触れて感動する。どんどん彼女の世界に入っていき、世界を認識するのです。ミナちゃんがいなかったら、彼はスケリグの心を動かすことができなかったんじゃないかな。

『生き物を見る』という点が、こんな風に小説の主題とつながっているのです。そう考えると、あの「机の中から虫が出てきてウギャー」というシーンは非常にだめではないかと、私はおもうのです。

とまァ、文句をぶちぶち書きましたが、この映画を褒めてるひとも多いので好みの問題かな。

『肩胛骨は翼のなごり』デイヴィッド・アーモンド

肩胛骨は翼のなごり
肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫)

原作と映画はプロットは似たようなものだけど、小説で味わうと、スケリグという不可思議な生き物の存在感がより深くかんじられるとおもいます。以下はマイケルがスケリグと初めて出会うところ↓

死んでる、とぼくは思った。彼は両足を投げだしてすわり、顔をのけぞらせて、頭を壁にもたせかけていた。ガレージの中のほかの品々と同様に、彼もほこりまみれで蜘蛛の巣だらけだし、顔はやせおとろえ、蒼白い。髪や肩にはアオバエの死骸が散らばっている。ぼくはその蒼白い顔と黒いスーツに懐中電灯の光をあびせた。

「なにが望みだ?」彼は訊いた。目を開けて、ぼくをみつめている。何年も声帯を使わなかったらしく、その声はしわがれてきしんでいた。「なにが望みだ?」

ぼくの心臓は激しい音をたてて忙しく脈打った。

「なにが望みかと訊いたんだ」

そのとき、母屋のほうからぼくを呼ぶ声が聞こえた。「マイケル、マイケル!」

ぼくはぎくしゃくと撤退し、ドアから外に出た。

- 山田順子 訳

映画の方ではこのシーンはかなり変わってましたが、原作のほうがずっといいとおもう。なんであんな風に変えちゃったんだろう。

Memorable Quotes

Skellig: Is there no end to your torture?

Mina: Is this goodbye?
Michael: Where will you go?
Skellig: Somewhere.
Michael: What are you?
Skellig: I'm something like you, something like a bird.
Michael: Something like an angel?
Skellig: Yeah. Or something like that.

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原題: Skellig
別題: Skellig - Ta ftera tis fantasias
Skellig: The Owl Man
制作年: 2009年
制作国: イギリス
公開日: 2009年4月12日 (イギリス)
2009年5月13日 (フランス) (Cannes Film Market)
2009年10月22日 (イタリア) (Rome Film Festival)
imdb.com: imdb.com :: Skellig
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