2008/10/31 (Fri) at 8:00 am

映画|バビロン A.D.|Babylon A.D.

独創的な世紀末世界を舞台に、傭兵ヒーローが謎の異能天才少女を守る近未来SFアクション。原作モーリス・G・ダンテック『Babylon Babies』。出演ヴィン・ディーゼルミシェル・ヨーメラニー・ティエリーシャーロット・ランプリング。監督マチュー・カソヴィッツ。2008年。

バビロン A.D. / Babylon A.D. DVDDVD画像

ヴィン・ディーゼル演じる傭兵、トゥーロプは貧民窟に逼塞していたが、ロシアギャングのゴースキーに仕事をもらった。「ある女をニューヨークに運べ」っていう仕事である。トゥーロプはアメリカ政府にテロリスト扱いされているので入国できないはずであり、そのパスポートは決して偽造できないんだけど、ゴースキーは「入国直前にこれを使え」とある注射器を渡した。この映画の設定のパスポートっていうのは生体に埋め込む方式なのである。アメリカに入国できるっていうこと自体が報酬の一部であり、これはトゥーロプにとって大きな魅力である。彼は仕事を引き受けた。

山の中にあるNoelite(ていうのはこの世界に君臨する大企業てか、宗教団体みたいなもんらしい)の修道院に連れていかれて、少女と面会した。オーロラという。そしてシスター・レベッカという名前の子守り役女性もいっしょにくるという。ふたりを連れて移動開始。

3人が移動していくようすはアクション満載でとても楽しい。人口過密地帯のスラムで謎のわるもんに襲われたり、広大な氷雪地帯をスノーモービルで爆走しつつ、無人飛行機の攻撃をかわしてやっつけるとか。ドドドドガガガーンずっがーーーーん!ってかんじの爽快アクション満載。旅を続けるうちにオーロラには特殊能力があるってことがわかってくる。その出生の秘密は?

※映画の時代設定は明確には明かされないが、オーロラの台詞で「シベリアトラは2017年に絶滅したはずだ」というのがあるんで、それ以降の未来世界と思われる。

※感想

映画の前半部は豪華なアクションシーンの連続でとても爽快だった。また映画の中に出てくる架空の武器とかSF的な舞台装置も独創的なデザインでおもしろかった。ブレードランナーみたい。ところが後半パートに入って、恐ろしく失速。ラストはものすごくつまらない。そしてエンドロール直前のエピローグがこれまた脱力。全体として説明不足であり、なんでそうなるのかわからない。という感想になっちゃいました。

ネットにいろいろ情報が出てますが、制作側でいろいろとゴタゴタがあったそうです。撮影時の天候などの理由から予算オーバーとなり、制作会社であるFOXと監督マチュー・カソヴィッツとの関係は悪化、最後はFOX側が勝手にアレコレと編集カットしちゃって、監督の意図通りには完成しなかったそうです。以下のページでマチュー・カソヴィッツの意見を読むことができます↓

Masters of Scifi - Babylon A.D. Director Mathieu Kassovitz Describes a Disastrous Production

監督は「なんの意味もないバカなアクション映画になった。映画の主題がまったく描かれていない。つまんないときの『24』を見ているようである」と嘆いています。オーロラの特殊能力についてよくわからないなと感じたのは無謀な編集カットのせいなのかも。

以下ネタバレを書きます。これは私の解釈ですが、いろいろと納得できない部分が多かったので、もしかしたら違ってる点があるかもです。

SPOILER!!!
ネタバレです!!!

トゥーロプたちを襲った謎チームは「オーロラの父の配下の者である」と述べ、おれらはワルモンじゃないといいたげだったが、その父親っていうのはすでに死んでるはずであり、トゥーロプは彼らを信じなかった。そこらへんの謎は後半になって明かされていきます。

旅を続けるうち、オーロラの天才異能ぶりが明かされていく。スラムで爆破攻撃を受けたときにはそれを予知したみたいだったし、潜水艦に乗り込む際にはウワーと群がる人々が無慈悲にダダダと殺されるのを見た彼女は「ヤメテー!」と叫び、馴れた手つきで潜水艦の操作パネルを操った。なんでこんな少女が潜水艦を動かす知識があるのか。同行するレベッカによれば、「オーロラは2歳で19カ国語をしゃべった」そうである。学んだことのない知識が自然に頭に湧いてくるらしい。3ヶ月前にNoeliteの医者がやってきてオーロラになにかのピルを処方して以来、彼女はへんになってきたそうである。

トゥーロプのエスコートのお陰で3名は無事にNYに到着。あとはNoeliteのHigh Priestess(最高権力者)にオーロラを引き渡せば任務完了なんだけど、トゥーロプはこのまま渡すとオーロラが死んでしまうらしいとわかってきた。てわけで、巨大な敵を相手に全面戦争を開始する。

武装した敵がワンサカ襲ってきた。苛烈な銃撃戦。トゥーロプはオーロラを守って逃げる逃げる。敵はミサイルを発射した。それはトゥーロプに埋め込まれたパスポートに反応して追撃してくる。彼は逃げられない。絶体絶命となったところで、オーロラはなぜかトゥーロプのおなかに銃弾をズドン。そのときにいう台詞がコレ↓

I need you to live.

わたしはあなたに生きていてほしい。

なんでこういいつつ彼を殺しちゃったかというと、追尾ミサイルから逃れるには彼の生体反応がゼロになる必要があったからだと思われる。彼女は異能的天才なので、瞬時に計算してソレをやったということらしいんだけど、なんだか疑問が残るシーンである。トゥーロプはこのあと死んで生き返るんだけど、なぜオーロラはそれが予測できたのか、私には謎でした。

死んだはずのトゥーロプはArthur Darquandierていう科学者に救われた。目が覚めたら体の半分がマシンになってるような男がいて、オーロラの父親だと名乗った。トゥーロプの肉体はハイテク手術によって再成されていた。

Darquandierはトゥーロプにオーロラの出生の秘密を明かして「彼女を守ってくれ」と頼んだ。彼は胎児だったオーロラにスーパーインテリジェンスな脳外科手術をしたそうである。そして彼女が産まれたあと、DarquandierはNoeliteに排除された。彼は殺されたフリをして秘かに潜伏した。オーロラの母親はNoeliteの最高権威者であるHigh Priestessだった。

High Priestessていうのは、トゥーロプにオーロラ移送の仕事を頼んだ雇い主である。High Priestessがなぜオーロラを欲しがるかというと、彼女はオーロラに脳外科手術をした際にある処置を施した。それは『一定の年齢に達したときに妊娠をする』という機能を与えるものだった。つまり自分の娘を科学的なトリックによって『処女受胎』させ、ソレを政治的に利用しようと画策したのである。Darquandierは自分の娘が政治の道具に使われるのは好まないのでHigh Priestessと対立したっちゅうことらしいです。

というかんじで、謎の全貌が明かされたところで、最後のクライマックスに突入する。わるもん一味を相手にカーチェイスの末、敵を排除した。これほどにハイテク武器が出てくるSF舞台の設定なのに、ものすごく平凡なカーアクションでピンチを脱出するというのが違和感ありありだなと思った。

そしてエピローグ。

オーロラは双子を出産。出産と同時に死亡した(そのようにプログラムされていたと思われ)。トゥーロプは産まれた双子のパパになった。

※疑問点を箇条書きにしたらえらい数になりそう。めんどくさいのでやりませんが。原作小説はとても練られた深遠な物語らしいので、ロングラン長編のテレビドラマにしたらいいのになと思いました。もちろんFOX以外のネットワークで。

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原題: Babylon A.D.
別題: Misión Babilonia
Babylon A.D.
Вавилон н.э.
Babil M.S.
Babylon Babies
Babylone A.D.
邦題(カタカナ): 『バビロン A.D.』
制作年: 2008年
制作国: アメリカ/フランス/イギリス
公開日: 2008年8月20日 (フランス)
2008年8月28日 (ロシア)
2008年8月29日 (カナダ)
2008年8月29日 (イギリス)
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2008年9月11日 (ドイツ)
2008年9月26日 (スペイン)
2008年10月2日 (オーストラリア)
2008年10月2日 (韓国)
2008年10月24日 (イタリア)
2009年5月9日 (日本)
imdb.com: imdb.com :: Babylon A.D.
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
アートディレクション
セット制作
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
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