2011/1/3 (Mon) at 1:15 pm

映画|フィア・ミー・ノット|Fear Me Not (Den du frygter)

平凡な中年男が、抗うつ剤の新薬治験者になったら、だんだんへんになって狂っちゃう話。デンマークのスリラー映画。ウルリク・トムセンパプリカ・スティーンEmma Sehested Høegラーシュ・ブリグマンスティーネ・スティーンゲーゼ。監督クリスチャン・レヴリング。2008年。

フィア・ミー・ノット / Fear Me Not (Den du frygter) DVDDVD画像

ミカエルさん(ウルリク・トムセン)は善良かつ平凡な中年男で、よきパパ兼よき夫という人物なんだが、仕事の忙しさに疲れてしまったもので、長期の休暇をもらうことにした。

一日中家にいて、雑用仕事をやったり、運動したり、娘(Emma Sehested Høeg)の送り迎えをやったりしているんだが、日本人的な感覚からすると「男が会社を休んで家でのらくらしている」なんて、かなりヤバい事態のように考えるひともいるだろうが、そういう悲壮感はぜんぜんないのです。

この夫婦(奥さんはパプリカ・スティーン)はお金に困っているということはなく、家族も周囲のひとたちも、家にいるパパを自然に受け入れており、人生の小休止ですよこれくらい普通ですよという雰囲気はデンマークの日常感覚なんでしょうか。

んで、この夫婦は妻の兄夫婦(ラーシュ・ブリグマン + スティーネ・スティーンゲーゼ)と仲良しで、しょっちゅうお互いに行き来をしているんだが、その義理兄ってのが医者で、彼が勤務する病院で抗うつ剤の新薬の治験者を募集していると聞いたミカエルさんは、なにを思ったか「ぼく、ソレに参加してみたい!」といいだして、彼は義理の兄を説得し、妻にナイショで治験者になった。

決められた量のピルを毎日呑んで、定期的に診断を受けるというのをやりだしたら、だんだんハイになってくる(抗うつ剤ですから)。いままで彼の人生には見えなかったものが見えだしたというかんじで、微妙に人格が変わってくる。治験は途中で中止になったんだが、彼は「ピルは捨てたヨ」と嘘をつき、いつまでもガボガボ呑み続け、依存症になり、しまいに狂っちまって、最後は完全破滅する。

現実味のある人生ドラマですなあ。スリラーというかドラマというか、なんのカテゴリに入れていいのか迷うわけですが、なかなかおもしろいですよ。

トレイラー動画

Fear Me Not (Den du frygter) (2008) trailer

感想

かんたんにいうと「優しかったパパが狂った挙げ句に自業自得で破滅する映画」ということですが、つっても、オノを持って走り回ったり、猟銃と日本刀を持ち出して近隣住民をブッ殺す!というような派手なもんではないのですよ。そういう娯楽ホラー的な映画ではなく、男の内面狂気を硬質に描いたドラマです。地味地味です。

この男が手を出した新薬の治験てのは、鬱病の患者さんは対象でないのです。副作用があるかどうかを視るためのもんなので、治験者は健康人でなければならないという前提で、ゆえに、医師も彼自身も彼が精神的に病んでいるという認識はなかったのですね。

彼がなぜそんなもんをやりたがったかというと、興味本位に加え、奥さんに秘密でなにかやりたかったみたいなノリかなあ。冒頭の彼の独白台詞↓

Mikael: I've been on leave for six weeks now. It was time for break from the frantic pace I was stuck in. For years, I've wanted some time to myself. But the transition from hard work to relative freedom is not easy. The changes I'd hoped for haven't appeared. So now I'll write down my thoughts more systemacally. I find it hard to stay focused. Unexpected details make me uneasy. I need to look for inspiration and change. And embrace every opportunity to move on.

仕事を休んでみたものの、生活が板につかないというか、やりたいことが見つからない、という漠然とした悩みを抱えていたようです。つげ義春の漫画に「奥さんにナイショで別人名義でアパートを借りて別人になることを楽しむ男」てのがありましたけど、ああいう感覚に近いのではないですか。ひそやかな秘密行為に耽る楽しみにヒョイと手を出してみた。という調子。

それをやってるうちに、なにかこう、「平凡な幸せを意味なくブッ壊したい!」みたいな自己破壊衝動がガガガーと出てきちゃったのかもしれないです。後半20分である事実が明かされ、「えー、そうだったんですか!」というのがわかると、男は自分というものがわからなくなり、人格が崩壊し、すべてを失ってしまう。わかるきがするなあ。こういう狂気ってだれにでもあるんじゃないかなあ。

普通は、大人になるにつれて、この『ブッ壊したい』衝動は消えてしまうか、あるいは、自己の内側で飼いならすことを覚えるもんだと思うんですが、なにかの拍子にヒョイと水面に出てくるというのはだれの身にも起こりえると思うんだけど、こういう話を誰かにすると「そんな衝動なんて、ぜんぜんわからない!おまえはキチガイか!」というひともたまにいますね。不思議。。。なんで?だれでもそういうきもちになることない???

俳優のみなさんはなかなかよい。年頃娘のSelmaちゃんを演じたのはEmma Sehested Høegという子役さんですが、デンマーク版シアーシャ・ローナンという雰囲気の美少女ですが、とても演技が上手でした。

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原題: Den du frygter
別題: Wen du fürchtest
Akitől félsz
Fear Me Not
Korkma benden
Neboj se me
Nie bój sie mnie
No me temas
制作年: 2008年
制作国: デンマーク
公開日: 2008年9月6日 (カナダ) (Toronto International Film Festival)
2008年9月19日 (スペイン) (San Sebastián Film Festival)
2008年12月19日 (デンマーク)
2009年4月5日 (アメリカ) (Wisconsin Film Festival)
2009年5月 (アメリカ) (Seattle International Film Festival)
2009年6月 (イギリス) (Edinburgh Film Festival)
2009年6月23日 (デンマーク) (DVD)
2009年10月23日 (アメリカ) (Tallgrass Film Festival)
2010年11月16日 (アメリカ) (DVD)
imdb.com: imdb.com :: Den du frygter
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
セット制作
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
Makeup

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