2011/5/23 (Mon) at 6:20 pm

映画|メカニック|The Mechanic

チャールズ・ブロンソンが非情な殺し屋を演じる70年代アクション映画。チャールズ・ブロンソンジャン=マイケル・ヴィンセント。監督マイケル・ウィナー。1972年。

メカニック / The Mechanic DVDDVD画像

アーサー・ビショップ(チャールズ・ブロンソン)は『メカニック』の名にふさわしい、冷血酷薄な殺し屋である。クリーンな仕事が信条。殺人の証拠を残さず、確実に殺す。

映画のオープニング15分間。彼の暗殺仕事が台詞ゼロで描かれます。その映像はとてもわかりやすくて、楽しいです。スパイ大作戦みたいよ。

ある日、いつものように暗殺組織から殺しの指令を受けたら、こんどのターゲットはハリー(キーナン・ウィン)という男で、組織の要人であり、つまり身内を殺せという話であり、アーサーにとっては死んだ父の親友という間柄であった。しかし、相手が友達だろうが関係ナシ。サクッと任務完了。心臓発作を偽装して殺した。

んー、マンダム。

その後、ハリーの葬式において、その息子、スティーヴ(ジャン=マイケル・ヴィンセント)と出会う。こちらは父親の死に悼むようすなく、ヒッピーな友達連中をワンサカ家に招いて、乱痴気パーティをやっているという享楽気質の若者。みためは男前ハンサム。

享楽者スティーヴは、アーサーという男、危険な香りぷんぷんの謎男に興味を抱き、子分のようにまとわりつくようになる。ハリーはそんなスティーヴを、フフフ、若造め、チャラチャラしてんじゃねーヨ、とか思ってるのかどうか知らないが、あしらうような調子で接するのであるが、やがて、スティーヴが殺し屋稼業に適性ばっちりであると知るや、自分の弟子として迎え入れる。スティーヴは喜んでついてくる。

ふたりはコンビとなり、いっしょに殺人仕事をやるんだが、これが組織の大ボスの耳に入ると、アーサーは「ルールを守れ」と警告される。アーサーは組織から多大な信用を得ているが、そんな彼でも勝手な行動は許されないのである。この世界は非情だから。

アーサーは次の指令を与えられる。こんどはナポリにいって殺人しろという話で、例外的に急を要するというんで、アーサーは少々気乗りがしないのであるが、命令には逆らえない。いっちょうやりますかと、スティーヴを連れて、ナポリに行く。そこには罠が待ち受けているのであった。

作曲家ジェリー・フィールディングのスコアがジャジャーンと鳴り響き、ブロンソンのキラー演技がぐわーと輝くのであります。

トレイラー動画

The Mechanic (1972) trailer

感想

ジェイソン・ステイサム主演でリメイクされたというんで、こちらからレビューします。リメイク版についてはこちら↓

チャールズ・ブロンソンが演じる殺し屋アーサーは、おそろしく冷血なマシンキラーです。相手が女子供だろうが躊躇しない。自分が決めた通りに動く。だから『メカニック』。

人間は死んだらおしまい。天国も地獄もナシ。無。そんだけ。という調子の、突き放した視点で生死が描かれる。殺し屋家業ひとすじの男の生きざまを描く、陰鬱なハードボイルド。

のはずなんだが、ときにはかわいい売春婦(ジル・アイアランド)に癒しを求めたり、父の親友を殺すときには沈鬱顔でピルを飲んだりしている。自分ルールを貫くのは大変みたい。

そして、ジャン=マイケル・ヴィンセント演じるスティーヴは、これまた、先天的な殺し屋気質で、派手好き/スポーツカー好き/射撃好き/殺人好き、と、まァ、欲望に忠実な野心家なんだが、その心は冷えている。

彼は自分の父が死んだあと、家にヒッピー連中を招いてパーティをやるんだが、そこでこんな台詞をいう↓

Steve McKenna: My father never really liked my friends. And I'm not so sure I do either.

ぼくの父はぼくの友達連中を嫌っていた。じつをいうと、このぼくもコイツらを好きかどうかわかんない。

この台詞は彼のキャラクターをよく物語っています。ドンチャン騒ぎをやりたがるくせに、常に冷めていて、世間を斜めに眺めている。どことなく、いわゆる、伊達邦彦風なんですな。

こんなふたりの特徴がよく現れているシーンが最初の方にあります。ふたりがリストカットする女(リンダ・リッジウェイ)を冷徹に眺めているという場面です。

その女はスティーヴの愛人だったらしいんだが、彼がぜんぜん構ってくれないので「死んでやるぅ!」とわめきだして、それを聞いたスティーヴは「いっしょに見にいこう」とアーサーを誘うのです。

女はふたりの見ている前で手首を切る。徐々に意識が遠くなりながらも「ぜったいあんたはあたしを助けてくれる!そうに決まってる!」といいはる。とんだ地雷女ですが。

スティーヴは彼女を助ける気なんかサラサラない。君が死ぬのは君の勝手、つって、サンドイッチを食いながら見物する。

一方のアーサーはこんな悪趣味な余興に付き合わされてさぞや辟易していると思いきや、冷血顔で死にゆく女を眺めている。んで「お嬢さん、体重はどれくらい?」と質問する。答えを聞くと「2時間半から3時間で死亡する」と教えてやるの。

最後には、女が根をあげて「死にたくない」といいだす。スティーヴは「急いで警察署に行けば助かるかもヨ」つって、車のキーを投げる。助かりたいなら自分で行け、ってことです。女は流血しつつ、キーを持ってよたよたと出ていく。

彼女はその言葉をスティーヴの愛情だと信じたのか、あるいは、アホらしくなってやめる気になったか、どちらにもとれるようなかんじ。

女が去った後、ふたりは「彼女が死ねばいいと思ったのか」という点について話し合うんだが、どちらも明確な物言いを避ける。スティーヴはアーサーの真意を知りたがるんだが、アーサーはケムに巻くような調子で牽制する。そして静かに別れていく。

そのシーンの会話↓

Arthur Bishop: Would you have let it happen?
Steve McKenna: Would you? Look, I was just an observer.
Arthur Bishop: You haven't answered my question.
Steve McKenna: Well, what do you think?
Arthur Bishop: We'll never know, will we?
Steve McKenna: Well, say that I just sat there, or we just sat there, and watched her check out. Think that would've been crazy?
Arthur Bishop: Irrational maybe.
Steve McKenna: Is there anything wrong with that?
Arthur Bishop: It means you have your own rule book.
Steve McKenna: I can dig that.
Arthur Bishop: Is that so? It takes a very special kind of person to pick up the tab for that kind of living. You say you dig it, but you're talking about something you know nothing about.
Steve McKenna: And you do?
Arthur Bishop: Do I?
Steve McKenna: Oh, very slippery. When he's cornered, he answers questions with questions. What's your action, Mr. Bishop?
Arthur Bishop: You've been watching too many late movies. Well, it's been interesting. Thanks. Maybe another time.

ふたりはリストカッター女をいっしょに見物することで、なにかこう、お互いの肌触りを確認し合ったという、ファーストコンタクトの瞬間です。

この場面はとてもショッキングで陰鬱ですね。おどろおどろしいスプラッター描写などはありませんが、この映画の挑戦的な視点がよく現れている、いいシーンだったです。

私はこの映画を子供の頃に見たと思うんだが、これね、子供が見たらぜんぜん意味がわからなかったとおもいますね。なんでこのネーチャンは手首を切るんだろうっておもうよね。

私の死んだ父はアクション映画が好きで、特にチャールズ・ブロンソンが好きで「この顔がたまらん!」といつもいっていました。男前というよりどう見ても悪人顔ですから、こういう顔の俳優が主役を演じるというのがたまらんなーという意味だったと思われます。たしかに。

最後にアッと驚くエンディングがある。それは観る者をびっくりさせると同時に、殺し屋さんの哀れな死にざまを皮肉に描いているという点で、傑作です。

以下にネタバレを書きますが、こちらはリメイク版『メカニック (2011)』の結末とは違うんだが、ダブってる箇所もあるんで、オリジナルもリメイクも未見の方は読まない方がよいです。リメイクを見たあとに、オリジナルはどうだったのかなーと確認したらいいとおもいますよ。

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邦題(カタカナ): 『メカニック』
制作年: 1972年
制作国: アメリカ
公開日: 1972年11月17日 (アメリカ) (New York City, New York)
imdb.com: imdb.com :: The Mechanic
監督
脚本/原案
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