2010/10/19 (Tue) at 2:21 pm

映画|ギャングスターズ・パラダイス|Gangsters Paradise: Jerusalema

ギャングのボスとして逮捕されたラッキー・クネネの半生を描いた映画。南アフリカ。Rapulana SeiphemoJeffrey ZekeleShelley Meskin。監督ルフ・ジマン。2008年。

ギャングスターズ・パラダイス / Gangsters Paradise: Jerusalema DVDDVD画像

Inspired By Real Eents...

2007年。ヨハネスブルグ。

大規模な警官突撃隊がスラムアパートに突入する。麻薬やら武器やらを押収し、ギャングどもを一斉逮捕。ギャングの大ボスであるラッキー・クネネもお縄になった。

その先は、グルリと時代が遡って、クネネという男の半生が描かれます。

1994年。南アフリカ共和国。反アパルトヘイトの英雄、ネルソン・マンデラが大統領に就任して国中がおおさわぎという激動のさなか。

貧乏村の貧乏少年ラッキー・クネネ(少年時代はJafta Mamabolo、大人以降はRapulana Seiphemo)は「いつかBMWに乗りたいもんだ」と夢見る少年だったが、地元ヤクザのアニキ(Jeffrey Zekele)に見込まれ、パシリ修行を経て、クルマ泥棒をやりだしたらこれが大当たりでウハウハ。たくさんおかねをもらえていい気になった。

でもやっぱり「ヤクザ稼業はよくない!」と考えて足を洗おうとしたが、そう簡単に抜けられないから困った!と思ったら、血塗れ撃ち合いに巻き込まれ「もうここにはいられない!」と生まれ故郷を去る決心をする。幼なじみのアンちゃん(少年時代はMotlatsi Mahloko、大人以降はRonnie Nyakale)といっしょに、都会ヨハネスブルグに行く。

10年後。

クネネは犯罪多発地域Hillbrowの貧乏アパートに住んでタクシー運転手稼業のしんどい毎日を送っていたところ、ある日、ヤリ手弁護士(ケネス・ンコースィ)と知り合ったことをきっかけに起業する。それは不動産業。

彼が住むアパートは「貧乏人とヤク中と売女しかいませんよ」という典型スラムアパートで、ビルの管理会社は管理義務を放棄してひとが住めるような状態じゃないにも関わらず、しょっちゅう家賃を値上げして貧乏人たちは搾取されている。彼はこれに目をつけて『Hillbrow People's Housing Trust』という会社をつくった。

『Hillbrow People's Housing Trust』はアパート住民を代表する。みなさんの家賃を一括徴収してひとつの口座にまとめる。そして、ビルのオーナー/管理会社と交渉し「人間が住めるような環境をつくってください。それが満たされたら家賃を払います」とお願いする。その過程において、タムロするチンピラどもを実力行使で追い出したり、アパート内をきれいにしてあげたりというサービスもやる。

住民たちは大喜び。クネネを歓迎する。彼は地元のヒーローになるんだが、それで終わらない。ここから先が彼のうまいところで、以下のような筋書きが用意されている。

管理会社は最初のうちは「貧乏人がナニをいってやがる!」と無視するんだが、家賃収入が途絶えるのでほっとくわけにもいかない。が、家賃を払わない住人を追い出すとか、財産を差し押さえるというのも手間なので、いやいやながらクネネと交渉したいといってくるんだが、クネネはこれをシカトする。引き延ばし作戦です。

だらだらやってるあいだ、家賃はすべてクネネの会社に入金され、プールされていく。彼は困らない。しまいにビルオーナーは金利を払えなくなる。ビルは競売に出される。そこにクネネお抱えの弁護士が出てきて、底値で買い取る。クネネは激安でビルを手に入れる。ここから先は彼が大家さんになる。中間搾取する業者はいないから家賃を安くできる。

クネネは儲かる。住民は喜ぶ。てわけなのです。ホエー。なんだか乗っ取り商法みたいだが、クネネの弁護士にいわせると法律を遵守しているらしいです。ま、うまいことやったわけですね。

映画の中で、ビルの持ち主の白人男が「この国じゃ11の言語の公用語があるんですよ!」と嘆き口調でジャーナリスト(ルイーズ・セイント=クレア)に答えていた。つまり、法律的な手続きがすごく煩雑だから現実の問題に対処しきれないという意味かな。クネネさんはそこにつけこんだということかな。このへんよくわからないが、貧乏人どもを相手にいちいち立ち退き訴訟するというのは現実的に無理なんだろうなというのはわかる気がする。

クネネは同様の手口でHillbrow地区の建物を次々に手に入れる。ビジネスは軌道に乗る。彼は大勢の部下を従えるコワモテの不動産会社社長になった。

貧乏村でのクルマ泥棒時代のヤクザな人脈を使ってチンピラを追い出したり、管理会社との交渉を不当に引き延ばしたり、というあたり、ダーティな手法を用いているんだが、彼は貧乏人を救っているし、ヤクザと闘っているし、激動の時代のさなかでもあるわけだし、これくらいは許容なのではないかなと思える。みためはおっかない悪徳不動産屋で、清廉というわけではないが、悪人でもない。あくまでカタギにこだわる矜持を持っているよう。

クネネさんは調子良くいくんだが、あまりに急進的であるせいか、ヤクザに逆恨みされたり、白人警官(ロバート・ホッブス)にいぢめられたりもするんだが、彼はがんばってビジネスを拡張していくのであるが、なんだかんだいろいろあって、最後はHoodlum of Hillbrowという汚名を着せられ、「マフィアの大ボス!」ということにされちゃってヒデー目に遭う。そのまた先に意外なtwistがあるんだが、詳しくは映画でどうぞ。

トレイラー動画

Gangsters Paradise: Jerusalema (2008) trailer

感想

この映画はホラー映画じゃないんですが、やたら評判がよくて「南アフリカ共和国のmasterpiece!」なんていわれているんで、どんなもんかえと観てみましたよ。

私は「貧乏セガレが苦労して出世してマフィアに成り上がる」という筋書きの映画がとても嫌いで、だから『アメリカン・ギャングスター (2007)』なんか大嫌いで、「デンゼル・ワシントンの演技にシビレた」とかいってるひとのきもちがサッパリわからないという調子なので、かなり懐疑的に見始めたんだけど、これはなかなかよかったです。

この映画のクネネさんはマフィアの大ボスってことにされちゃったんだが、それはちょっと違うと思うのですね。非合法スレスレの手法でビルの乗っ取りをやってるコワモテの不動産会社社長てことで、マフィアみたいな顔をしているが、少なくとも、売春やらヤクバイというようなことはやってない。むしろそういう連中と闘っています(実際どうだったのかは知らないけど、映画での話)。

彼は貧乏村にいた頃にはデール・カーネギー、タクシー運転手になったらドナルド・トランプの本を読んでいました。正義感があると同時に「金持ちになってなにがわるい?」という野望もあり、いわば、清濁を呑み込んだ人物として描かれています。

彼には白人娘の恋人(Shelley Meskin)がいるんだが、これをサラッと自然に描いていたという点がよかった。また、この恋人の弟(ダニエル・バックランド)がどうしたとか、また、貧乏村に住んでた頃の幼なじみ女がどうしたとか、そのアニキがチンピラになったとか、貧乏村時代のヤクザのアニキがどうしたとか、いろいろとサブストーリーがあるんだが、それらがうまいこと絡まって物語に厚みを与えている。

全体的におもしろかったけど、残念なぶぶんもありました。最後のほうにきたらば、自滅的に銃をばんばんやりだすもんで、クライマックスの展開は「よくあるアクション映画のノリになってしまった」と少しがっかりした。あくまでカタギにこだわるのだ!というクネネさんのクールさがよかったのになあ。

また、こういう実在人物ベースの映画は「どうせ都合良く脚色しているんだろう?」という気がするんで、心から楽しめないというきもちもある。ドラマとして楽しめばいいじゃないかというのもわかるけど、やっぱり、ほんとのクネネさんはどんなひとだったのかなという点も興味があるから、だれか南アフリカの歴史に詳しい人がいたら、ぜひこの映画を観てもらって客観的な視点でのレビューを読まさせてもらいたいもんだと思うんで、そういうひとがいたらぜひ書いてください。

クネネさんはおかねが溜まったところでホイと引退し、盆栽でもいぢってりゃよかったと思うんだが、そういう発想をする人間ならあそこまでいけなかったかな。あー、だいたいの話、それだと映画にならないですね。

DVDには10分程度のDeleted Scenesが入ってます。どれもいいシーンばかり。この映画は2時間近くあって、削らざるを得なかったのかなと思うけど、これらを見たら映画の意図がより明確にわかった。

Memorable Quotes

Lucky Kunene: I had two heroes. Karl Marx and Al Capone. Al Capone said, "If you're going to steal, steal big and hope like hell you get away with it." And Karl Marx said, "All property's theft." I think they'd both be proud of me.

Lucky Kunene: Look at all of them, coming and going from church. Hillbrow is like the new Jerusalem.
Leah: It's more like Sodom and Gomorrah.
Lucky Kunene: How can you say that?
Leah: Hillbrow is the crime capital of the world.
Lucky Kunene: It's just a place where poor black people come to make a living.
Leah: Don't play the race card on me.
Lucky Kunene: Old habits die hard. You'd be surprised how effective it can be.
Leah: I can believe it.
Lucky Kunene: What do you do?
Leah: I'm a nutritionist. I teach people how to eat properly.
Lucky Kunene: What kind of people don't know how to eat?
Leah: All kinds of people. People who wanna lose weight.
Lucky Kunene: So you teach fat people to be thin.
Leah: I run a clinic in Alex twice a week. I deal with malnourished children. I'll ask supermarkets to donate out-of-date food. And I teach parents what constitutes a balanced diet. What do you do, Lucky?
Lucky Kunene: I buy and develop property. I run a non-profit housing trust. Not everyone in Hillbrow is a criminal.

Nazareth: Lucky, he's clever.
Lucky Kunene: Clever is a person who doesn't use drugs. Clever is a person who sells drugs to you. And drugs make you think you're the clever one. If that's clever, it's too clever for me.

Lucky Kunene: They say behind every fortune is a crime. The greater the fortune, the greater the crime. But I don't know about that. It seems the only people who say that probably never made one. What's important in life is to set goals and go after them. Who knows? I might even talk Leah into moving to the coast after I've moved, into a building, or six. After every revolution comes a new order. But before that comes opportunity. After all, wasn't it PW Botha who said, "Adapt or die"?

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原題: Jerusalema
別題: Gangster's Paradise: Jerusalema
Jerusalem Entjha
Sötét utak
制作年: 2008年
制作国: 南アフリカ共和国
公開日: 2008年2月11日 (ドイツ) (Berlin International Film Festival)
2008年5月 (南アフリカ共和国)
2008年10月19日 (アメリカ) (Chicago International Film Festival)
2008年11月29日 (イギリス) (London African Film Festival)
2009年2月14日 (アメリカ) (Portland International Film Festival)
2010年6月11日 (アメリカ) (limited)
2010年7月9日 (イギリス) (limited)
2011年2月12日 (イギリス) (Keswick Film Festival)
imdb.com: imdb.com :: Jerusalema
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音楽
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アートディレクション
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