!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!
本ページは『映画| アウトレイジ・ワールド|Rites of Spring』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓
ネタバレ結末
キラーの目的は五穀豊穣を願う祈祷の生け贄であった。このキラーは広大な畑を所有する農夫である。彼の家族は人身御供の儀式を、20年以上の間、続けていた。
だから春になると人が行方不明になる。生け贄を捧げると地下から怪物が出てくる。怪物は誰彼なしにブッ殺す。その代わりに雨が降る。ってわけでした。
この真相は徐々に明かされるんだが、じつは、映画の冒頭でチラと暗示されていた。農夫の家が写るところで、天気予報のアナウンサーが「雨がたくさん降って、農家のみなさんはほくほくです」という話に続いて、こんなことをいっていた↓
It seems like perhaps our farmers have done a deal with the devil.
農家のひとたちは悪魔と取引したのかな。
また、この場面ではカレンダーが写る。3月20日にバッテンがある。春の始まり、すなわち春分日です。農夫キラーのおじさんが「今年もやるか」つって出かけていく場面でした。
という点がわかれば『Rites Of Spring』というタイトルはなるほどであります。もし日本版が出るなら、邦題をよく考えて決めてほしい。『ハチェット - 地獄のスプリング』とか、そういうのやめてほしい。よろしくお願いします。
こういう次第で、キラーは犠牲者を探しにいき、駐車場でレイチェル(アネッサ・ラムジー)とアリッサ(ハンナ・ブライアン)に目をつけた。ふたりを誘拐。アリッサを殺し、生け贄に捧げる。怪物が地下から蘇る。レイチェルは間一髪で逃げ出す。怪物が追ってくる。
そんなことをやってる間に、こちらは誘拐団のみなさん。
元々、誘拐計画を立案したのは、リーダーのポール(ソニー・マリネリ)だった。ポールは、金持ち男に目をつけ、かつて金持ち男に首にされた男、ベン(AJ・ボーウェン)を仲間にした。ベンの恋人(キャサリン・ランドルフ)は運転手役。ベンの弟(アンドリュー・ブレランド)はパシリ役。
こんな即席チームであるが、ポールとベンの間には仲間意識などはない。ポールがベンを仲間にしたのは必要だったから誘っただけ。だからいろいろとギクシャク感があるんだが、彼らは予定通り、家に押し入り、少女をさらった。
が、このときポールは想定外の行動をした。彼は「誰も殺さない」という約束を破り、奥さんを射殺したのである。脅しを利かせるためにそうしたと思われるが、これがヤブヘビだったという点をポールは後に思い知る。また、顔を見られたという理由でメイド(サラ・パチェリ)もいっしょにさらったが、これにはウラがあったと後に明かされる。
誘拐団は廃墟に潜伏。2時間後。ポールは金持ちパパに電話。カネを持ってこいと指示。ベンの弟が回収役。そこまでいったら大成功。人質を解放し、カネを山分けしてオサラバ。
のはずだったが、金持ちパパが銃を持って突入してくるから事態は紛糾する。パパは妻をブッ殺されて頭にきているんですな。この想定外の反撃に誘拐団はピンチになるが、人質のメイドは、じつはポールの仲間だったとわかって、またもや形勢逆転。スリリングでおもしろい。
こんなドタバタをやってるところに、気の毒娘のレイチェルさんが「たすけてー」つって飛び込んでくるのです。彼女を追って怪物さんもやってくる。オールスター勢揃い。わーわー。
ここでまた新事実が明かされる。冒頭のバーの会話で話題になった「レイチェルさんのせいで首になった男」というのは、じつはベンさんだったんですね。つまり、金持ちパパはレイチェルさんの雇い主でもあったというわけでした。
誘拐の直前、金持ちパパが奥さんと話すシーンで「会社でえらい損害が出ちゃった」としゃべっていたが、これが首になった理由なんですね。うまくつながっているじゃないか。私はそんなの忘れてて、コメンタリでいわれてわかったんですが。
ベンという男は誘拐団の一味になるくらいだから同情の余地はないが、根っからの悪人ではなく、ツキのない男だったのです。仕事を首になり、やむなく犯罪に手を染めた。かつて彼の雇い主だった男は、自分の顔を見ても誰なのかわからない。首にした従業員の顔なんか覚えてない。
と、まァ、哀れな男のドラマがあるわけだが、怪物さんにとっては知ったこっちゃない話である。どどーんと突入してきて、誰彼なしにブッ殺す。みんなはてんでばらばらに逃げ回る。きゃーきゃー。
すったもんだのアクションの末、関係者は全滅するが、レイチェルさんだけはピンチ脱出。全身血塗れ姿で、ギャーギャーわめいて、ひとりぼっちで走る。
おしまい。
全滅と書いたが、さらわれた少女は生き残った可能性がある。彼女はドサクサまぎれに森に走って逃げた。その後どこにいったかわからないが、きっと助かったんじゃないかな。とってもかわいい美少女の子役さんだったです。
感想再び
私の文章だとややこしく感じられるかもしれないが、映像ではとてもスリリングでおもしろいんですよ。
この映画はいったいなんだったのかと考えると『誰かが得をすると誰かが損をする』という世の習わしを描いたお話だったのかなと思われてきます。生け贄を捧げると農夫が助かるとか、誰かが首になると誰かが給料をもらえるとかさ。
冒頭のバーのシーンが再び思い出されます。自分のせいで首になった男に同情し、悩むレイチェルさんの台詞↓
Rachel: Maybe I could have done something.
わたしはなにかできることがあったかもしれない。
このとき、彼女は「こうすればよかった、ああすればよかった」とうじうじ考えていたが、まさか農夫を救うために生け贄にさせられるとは夢にも思わなかったでしょう。いくらレイチェルさんが優しくても「それはごめんだ」って思うよね。
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