!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!
本ページは『映画|ラスト・ブレス|Respire』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓
ネタバレあらすじ
古代ローマ人の言い伝え。
「人の魂は、命を終える瞬間、最後に吐き出される息と共に肉体から逃げていく。この『最後の息』は万病を癒し、長寿の薬となる」
1936年。ボルチモア。
ランドルフ・カミンスキー博士(ティモシー・ダイクス)は、万病に効く新薬の開発に取り組み、不思議な薬効を持つとされる、人間の『最後の息』を試験管に閉じ込める方法を発見したのであるが、その直後、わるもんにブッ殺された。
彼が死ぬ直前、恋人女(or 奥さん?)が大急ぎで博士発明の薬を飲ませ『最後の息』を試験管に閉じ込めた。彼女は試験管を秘密の箱にしまった。
博士は「想定外のことが起きた」「もう少し時間をくれ」とかいってたので、研究の成果はどこか不完全だったと推測されるのだが、その意味は映画の後半になって明かされます。
その後、箱はいろんな人の手に渡り、あちこち流れていったんだが、カギがかかっていてだれも開けられなかった。そうこうするうちに、箱の意味を知る者はこの世に誰もいなくなった。
んで、現在。
巡り巡って箱を手に入れたのは、アンティーク店を営む不幸女のスーザンさん(トレイシー・ティーグ)。彼女は重い病気を患い、医者から死の宣告を受けたばかりである。彼女には家族も恋人もなく、話相手になってくれるのは、お店のバイト女(ジェシカ・キーラー)だけ。ひとりでめそめそしています。
スーザンさんは例の箱をどっかで手に入れたんだが、その中にそんなすげーもんが入ってるなんて夢にも知らず、ネットオークションに出してほったらかしといた。
ある日、お店にレイフ・コリンズ(マシュー・J・ライト)と名乗る、誠実顔のアンちゃんがやってきて、彼女に「箱を売ってほしい」と頼んだ。さらに、彼はどこかのオークションに出品される予定の古い本の写真を出し「ぼくの代理人として、コレを競り落としてほしい」とスーザンさんに仕事を頼んだ。そして気前よく大金を払った。
スーザンさんのお店はアンティーク店だが、こんな金持ち客がやってくるのは滅多にないことらしい。彼女はギョッとして「お待ちくださいませ。あの箱はネットのオークションに出してありますの。どうなっていたかしら」つって、客に見えないようにウェブをチェックしたらば、そっちでは別のbidderがこの箱に驚く金額をつけているではないか。
スーザンさんは箱に興味を抱き、ネットオークションをキャンセルし、また、コリンズに対しては「いまここに箱はありませんの。こんどまでに用意しておきますわ」と嘘をついた。んで、彼が欲しがっている本の件は、彼の依頼通りにやることを約束した。彼女は本のオークションに出かけていった。
そしたら、その会場で、ネットオークションで高値をつけていた男、アレクス・ポー(ヴィンス・ユースタス)と出会った。彼はわるもん風の怪しいヤツなんだが、スーザンさんがキャンセルしたことに不満を述べ、すたすたと去っていった。
オークションが始まり、例の本が出てくると、スーザンさんとポーの一騎打ちになり、ふたりはどんどん値段を競り上げた。最後はスーザンさんの勝ち。
これで彼女は、ふたりの男が欲しがっている箱と本というふたつのアイテムを手に入れたわけだが、それになんの意味があるんだかわからない。
家に帰って本をいぢくり回していたら、その中にカギが隠されているのを発見した。スーザンさんはカギで箱を開けることに成功した。
中にはからっぽの試験管があって、鑞で封印されていた。これはものすごくヤバいものではないか、これを開けたら毒ガスが出てきて即死するんじゃないかと心配になるところだが、彼女は死の宣告を受けた女である。いまさら人生にこわいものなんかありはしないわ。
封を解いてみたらば、大昔に封印されたカミンスキー博士の『最後の息』がボワーンと出てきて、彼女はブッ倒れた。
目が覚めたら、スーザンさんは全快していた。ヒャッホー。健康体に生まれ変わって大喜び。客のことなんか忘れてこの世の春を謳歌していたところ、再びコリンズから連絡があり「箱と本を取りにいきますよ。ほんとうにありがとう。ディナーをごちそうさせてください」なんていうから、困ってしまった。
彼女はからっぽの試験管を鑞で封印し直し、カギを本の中に戻し、何食わぬ顔でそれを売ってしまえ、あとは知らないヨ、というつもりだったんだが、すぐにウソがバレてしまった。
ダマされたと知ったコリンズは怒ったが、後日また連絡があり、彼は丁重な言葉づかいで、怒ったことを詫び、秘密を告白した。
「病気の妹を救うためだったのです。ぼくはすがるきもちで古い文献を漁り、カミンスキー博士の研究を知った。そして、あの秘密の箱を手に入れさえすれば、妹を救えると信じていたんですよ。いや、いまでも信じています。もうアレはなくなってしまったが、博士がつくったヤツはほかにもあるはず。ぼくの妹のために、探すのをどうか手伝ってくれませんか」
といわれたスーザンさんは「そういうことだったんですか!」と驚き「誠にすませんでした」と謝り、協力することを約束した。
一方、本のオークション会場で出会ったポーもスーザンの店にやってきた。こちらは情婦らしきビッチ女のルビーさん(エリー・トレズ)を連れてやってきて「おいこら、おれの邪魔をしやがって!」と怒って暴れて「箱と本をよこせ!」つって、名刺を置いて去った。
てわけで、コリンズさんは病気の妹を助けるためとわかったが、ポーの方はその目的が謎である。ポーはこれを手に入れて、何をやりたいんだろうか。
そうこうやってるうちに、スーザンさんの肉体に変化が出る。しばしば手が震えたり、意識を失ったり、暴力衝動が出たりする。意識がないあいだ、意味不明の絵を描いたり、数式を書き殴ったりするのであるが、その意味はわからない。なにか副作用が出ているらしいです。
スーザンは不安になり、情報を求めてポーに会い、秘密を教わる。ここでポーは真実の中にウソを混ぜて彼女をだまくらかす。その後、いろんなことが起きて、徐々に真相が明らかになっていくのであるが、まとめるとこうである。
カミンスキー博士開発の秘薬は、単に「治癒する」ばかりでなく、不老長寿の効用もあった。ケガをすれば肉体は破壊されるから不死ということではないんだが、細胞は永久に衰えず、肉体は老化しない。
だから、首チョンパされるとか、ビルから落ちるとか、心臓を銃で撃たれるというような目に遭わない限り、永遠の若さで生き続ける。free radical(活性酸素)を取り除くことに成功したそうで。究極のアンチエイジング秘薬である。
この点は素晴らしいんだが、その製造方法がチトややこしい。この秘薬を得るためには、次のような過程を経ねばならない。
だれかに薬を飲ませる。そいつは死亡する。すかさず顔の前に試験管を置いて『最後の息』を捕獲する。それを別のだれか、病気で苦しんでいるひとに吸わせる。病気が治る。
つまり「だれかを救うために、だれかを殺さなくてはいけない」という困った話なんですな。こうなると夢の秘薬というより、悪魔の薬です。
カミンスキー博士は実験を行うために、死刑囚や重犯罪者をモルモットに使ったんだが、これには重大な副作用があり、治験者が吸った『最後の息』の持ち主の人格が、吸った者に乗り移ってしまうという点が後にわかった。また、自己統制力を失い、暴力衝動に駆られることもある。
スーザンの場合は、カミンスキー博士の『最後の息』を吸引したので、博士の人格が出てきて、ゆえに、数式やら絵などを書いたのであった。数式というのは、この秘薬を製造するためのレシピだったんですな。
彼女はポーから断片的な情報を得、そして、バイト女(ジェシカ・キーラー)に手伝ってもらいつつ、自分の内側の別人格から情報を引き出し、『最後の息』が収められた試験管数本をゲットしたのであるが、その後、さらに重大な秘密を知るに及んだ。
彼女の前に現れた3人、すなわち、コリンズ、ポー、そしてポーの愛人のルビーってのは、その昔、カミンスキー博士の手により、治癒してもらった最初の治験者たちだったのである。彼らは死刑囚たちの『最後の息』を吸わされ、不老になった。そして、現代に至るまで生き延びてきたのであった。
そして、さらに博士は、この3人を治癒したあと、精神病院のキチガイたちをモルモットに使ったという点もわかったので、この点から推察するならば、スーザンが発見した数本の試験管は、かなりヤバいブツである可能性が高い。コレを吸うと、キチガイ人格になっちゃうんですな。
コリンズは善玉、ポーとルビーはわるもんという調子だったが、後半になるとこれが逆転する。
コリンズの「妹を助けたい話」はじつはうそで、彼の本当の目的は博士の研究成果を独占することだった。そして、ポーとルビーはそんなコリンズが大嫌いで、呪われた研究は破棄すべきと考え、長年、敵対していた。ゆえに、彼らは箱と本を探していたのである。
最後は、コリンズが残りの『最後の息』を盛大に町にバラまく。すると、町の人々に精神病者の人格がガガーと乗り移ってしまうもんで、そこらへんで狂って暴れだす。
原因不明のキチガイ大量発生事件はニュースネタになるが、やがて狂人たちはポリスにブッ殺されて、事態は収拾する。
ラスト。
ルビー死亡。コリンズも死亡。スーザンとポーだけが生き残る。スーザンはもうこりごりという調子で、自分が書いた数式のメモ、博士のレシピを燃やして、はい、もうおしまいですよ。
と思ったら、じつは彼女は、レシピを隠してて、さらに例の箱の中には隠しポケットがあり、そこには博士がつくった薬(死ぬひとに飲ませるヤツ)が数本残っているのであった。
ニタニタ笑いをするスーザンさんの手は震えています。
おしまい。
※後半クライマックスで、キチガイになったひとたちが荒れ狂うんですが、いくら精神病のキチガイが元とはいえ、ポー、コリンズ、ルビーに比べて人格憑依の度合いがひどすぎるんではないか、という疑問が出るわけですが、その点については、ラスト近くのポーさんの台詞「暴力衝動を抑える方法がある」とかいってたんで、それで説明できるわけです。ちょっとコジツケぽいですが。
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