!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!
本ページは『映画|レイク・マンゴー 〜アリス・パーマーの最期の3日間〜|Lake Mungo』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓
ネタバレあらすじ
アリスの死後、家の中でオカルト現象が起きる。オバケを見たとか、音がするとか、心霊写真とか。アリスの母は「もしかして娘は生きているのではないか」という考えを持つようになり「墓を掘り起こしてDNA鑑定をやってくれ」と夫を説得し始める。
死体を確認したのは夫自身であり、彼はその目で見たわけだから夫婦の意見は割れるが「もしかして万にひとつの間違いがあったかも」ということで、法的な手続きを依頼し、死体を掘り起こすことになった。これで母が納得できるならやってみるかという気持ちもあったのかもしれない。が、DNA鑑定の結果、やはり死体はアリスに間違いナシという結論であった。
それでも母は納得できず、こんどはサイキックコンサルタントのオッサンを家に呼んで助けをお願いした。このオッサンはラジオで人生相談をやっている人物で、その容貌は怪しい魔術師風情ではなく、知的なカウンセラーといった雰囲気だったので、最初は懐疑的だった父も彼を受け入れた。オッサンはいろいろやるんだが、結局、解明できず。
映画を観ている私たちには、ほんとにオバケなのか、あるいは悲しみの家族が妄想をしゃべっているのか、どちらともいえない調子。判断保留だな。
と思ったら、ここで新事実が発覚する。心霊写真/映像と思われたものは息子(アリスの兄)の手によるインチキ捏造であった。最初のきっかけは偶然である。彼がアリスの服を着て外を歩いていたら、他人が撮影した写真の背景にたまたま写ってしまったということなんだが、そこまではわかるが、彼は、その後、こんどは意図的にインチキ写真/映像をつくり続けたのである。彼は両親に打ち明け謝罪をしたのだが、気になるのはその理由である。彼はインタビューに対して以下のようないいわけをした↓
「当時、ママはアリスが生きていると固く信じている風だった。そのママの考えを補強してあげたかった」
てことなんだが、不自然だなと思うものの、悪意でやったわけではないのは確かであるようだ。人間、極限状態になると意味不明な行動をしてしまうということなのだろうか。さて、ここまでの話を整理しておくと、心霊写真/映像の類いはニセだと判明したが、その他の不思議な出来事はまだわからずじまいである。
これをきっかけに、家族はますます世間の注目を集め、プライバシーを維持するのが困難になってくる。さらに息子は自己嫌悪に陥る。彼の精神状態を心配するサイコロジストのオッサンは、彼を連れて小旅行に行く。このオッサンにはたくさんのクライアントがいて、その人たちは一様に愛する者の死に悲嘆している人ばかりなんだが、そういう人たちとオッサンのやりとりを見つつ、息子は癒される。
息子が旅行から帰ったのち、家の中を撮影したビデオの中に再び不審な人影が発見される。こんどこそオバケか?と思ったら、また違っていた。それは近所の顔なじみの男であった。そいつは家族ぐるみのつきあいをしていた間柄だったんだが、なぜかアリスの死後、引っ越していなくなった。それがとつぜん夜中に無断侵入をし、アリスの部屋を漁っていたのである。
彼はなにを探していたのであるか。と思ってアリスの部屋を調べたら、ビデオテープと日記が出てきた。ビデオを再生してみたらば、衝撃の映像が出てきておののく。それはアリスと近所男とその奥さんが3Pをやってる映像だった。男はアリスの死後、半年以上経ってから恥ずかしい行為の証拠を隠滅にきたのであった。両親はショック!
さらに追い討ちをかけるように次なる新事実が出る。ビデオといっしょにあった日記の中に、家族がお世話になっているサイキックのオッサンの名刺があったのである。つまりアリスは生前(死亡する5ヶ月前)、家族にナイショでカウンセリングを受けていたのであった。オッサンはアリスの家族に会う前からアリスを知っていたのになにもいわなかった、という点は大きな信用問題であり、オッサンは「守秘義務があるからいえなかった」といいわけをしたが、両親はこれを許さなかった。
このケースの場合、アリスは水難事故死であるとだれもが思っていたのだから、オッサンとしては考えた末に知らないフリをしたのだろう。もし殺人の疑いがあるようならオッサンは早期に打ち明けていたかもしれない。こういう場合の専門家の行動ルールとしてどうなのか私にはわからないけど、家族が怒るのは当然だなと思う。
映画の冒頭で流れる「I feel like something bad ... 」のアリスの声のナレーションはオッサンとしゃべったときの録音である。
母はアリスの日記の中に次の文章を見つけて読んだ↓
Alice: I had a dream last night. I was cold and wet. I felt heavy, like I'd been drugged, and when I woke up, these sensations didn't go. I was feeling sick and confused and I was starting to get scared. I needed to see Mum to talk to her. I stumbled to her room and as I stood there at the bed, watching them, I was overcome by this intense sadness. Then the sadness turned to fear. l just stood there paralyzed with fear and l realized there was nothing that they could do for me anymore. l've never felt so utterly alone. Everything felt wrong. My body, the way things looked, then l realized that there was something wrong with me. I started to cry, standing there at the foot of the bed.
アリス: わたしは夢を見て目が覚めた。きぶんが悪くて頭が重かった。わたしは落ち込み、混乱し、こわくなった。わたしはいまこそママにすべてを打ち明けなくてはと思い、彼女の寝室にいった。ベッドに寝ている両親を見ていたら、とても悲しくなり、やがて悲しみは恐怖に変わり、体が麻痺したようになった。打ち明けたところでなんにもならないのだと知った。わたしはこの上なく孤独だった。すべてが間違っていた。わたしの肉体は他人の目にはどんな風に写るだろう。すべてわたしのせいなのだ。もう泣くしかなかった。
母は娘の遺書を読むようなつもりでそれを読んで悲しく思った。アリスは後悔して、深く悩んでいたというわけですね。もしかして妊娠をしたのか(検死をしたのでそれはないはずですが)、あるいは男になにか脅されていたのか、と想像できるわけですが、そこらへんは闇の中です。
アリスがこっそりカウンセリングにいったのは7月だが、その翌月、彼女は学校のお遊び行事でマンゴー湖に行っている。そのことも日記に書いてあったのだが、母は旅行から帰ったときのアリスのようすがへんだったことを思い出した。アリスはケータイ、ブレスレット、時計をなくしたといって浮かない顔をしていたのである。
ここでまた新しいビデオ映像が出る。それはお遊びキャンプの最中に学校の友達がケータイで撮影したビデオなんだが、浮かれて遊んでいる子供たちが写っているんだが、アリスだけはノリが悪い。さらにそれをよく見ると、アリスがみんなから離れた場所で、なにかを地面に埋めているところが写っていた。
2007年2月。
家族のみなさんはマンゴー湖に行き、彼女が埋めたものを発見する。アリスがなくしたといっていたケータイに加え、ブレスレットやらリングなどがあった。すべて彼女がだいじにしていたものである。家に戻り、ケータイを充電し、そのメモリにあったビデオを見た↓
暗い映像。屋外。地面は砂地。キャンプの最中に撮影されたものと思われる。人影が遠くから接近する。やがてその顔がアップになる。グロ顔。うげええ。撮影者はケータイを落っことす。映像はブレブレになる。おしまい。
という内容だったが、これを見た父はそのグロ顔に見覚えがあった。それは父が確認したアリスの水死体の顔だった。つまり、アリスは自分の未来の姿のオバケを見ちゃったということである。彼女はそれが自分だとは夢にも思わなかっただろう。水死体になると顔がずいぶん変わってしまうので。アリスにしてみれば、悩んでいるところにグロ顔のオバケが出てきたもんで、もうわたしは逃げられない、死ぬしかないと思ったんじゃないかな。彼女にとってそれは死の予兆だった。というような。
これを見た父は「アリスが自分が死ぬと思ったとは、わたしは思わない。おそろしかったことだろう。つらかっただろう」とその胸中を想像した↓
Russell (father): No, I was never convinced that Ali believed she was gonna die. You know she had morbid thoughts, sure. I mean, who doesn't? And she had nightmares that upset her, and enough to consult Ray. I don't know that anybody's really convinced that they're gonna die.
また、母は「家に帰ってきたら雰囲気が変わっていた。家は穏やかさを取り戻していた。アリスはわたしたちに伝えるべきことを伝え、去っていったのだろうと思った」と述べた↓
June (mother): We had found out about the Tooheys, Ray, and what had happened at Lake Mungo. And by the time we returned home, the house felt diffrent. It was ... calm. I think that Alice wanted us to know more about her. She wanted us to know who she really was, before she ... you know, before she could leave.
家族はそれぞれの感想を持った。無力感と安心感が合わさったような複雑心理かな。やがて彼らはやわらかに着地したという雰囲気で、徐々に平穏を取り戻す。よろめきつつも、やっとこさ娘の死を受け入れたというような。
6ヶ月後。
家族は引っ越しをすることを決める。父の締めくくり的お言葉↓
Russell (father): It seemed strange to me that Allie should withdraw so abruptly and we didn't help her, we didn't change anything.. I think we collectively made a decision to move forward. Moving was a big part of it. Starting all over.
アリスは唐突にわたしたちの前から去っていったという点に、奇妙な感慨を覚える。わたしたちは彼女になにもしてやれなかったし、また、なにかを変えることもできなかった。とにかく家族は前進すべきだとみんなは感じたと思う。それがだいじだと。心機一転です。
ラストは残った3人家族のスナップ写真。背景の家の窓にアリスのオバケがたたずんでいるような。という印象シーンにかぶせて、アリスの声のナレーションが入る↓
She's gone.
ママは去っていった。
おしまい。
最後の感想
映画を観る前にこのネタバレを読んじゃったせっかちさんも、もし興味を持ったらぜひDVDを観てください。このネタバレはたくさんハショッてて、物語のうわっつらだけです。細かい台詞の妙を楽しんでくださいよ。
さて、映画の中では、アリスは自殺したのか、あるいは、オバケに湖に引きずり込まれたのか、アリスと近所男とのあいだに具体的にどのような会話があったのか、そもそもの話、どうして彼女と近所男がそういうことになっちゃったのか、といった疑問点に関しては謎のまま終了です。
それが不明確な印象を与えるという意見もあるでしょうが、私的にはいいラストでしたよ。この家族が娘の死を乗り越えた、かどうかはわからないが、とりあえず次の段階に進むことができたという点はとてもよく伝わったので。オバケかどうかというよりも、この点が映画のキモではないかと。
アリス、さようなら。
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