PV2,703

!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!

ネタバレ注意!SPOILER ALERT!

本ページは『映画|サイレント・リトリート|Silent Retreat』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓

ネタバレ結末

ここは瞑想センターじゃなくて洗脳センターだった。カウンセラー先生と息子たちの目的は『妻にふさわしい服従女をこしらえること』である。この場合、精神を支配することが目的なので、レイプするとかエッチなことはやらない。エッチどころか、「女はこうあるべき」思想に凝り固まっているので、狂ってはいるけれど、極端に純情な面もあったりして、そこがけっこうおもしろい。なにかこう、新スタイルの狂人キャラを模索しているような。

カウンセラー先生と裁判所の判事は兄弟だった。彼らは結託し、身寄りのない少女候補者を洗脳センターに招き入れる。記憶を消すへんな装置を使うんだが、そこらへんは従来のホラー映画とあまり変わり映えしない。あんなもので人間の記憶が消えるのか。という疑問はさておき、少女たちは1ヶ月程度のつもりでやってきて、じつは何年も監禁されていた。記憶を消されているから、本人たちは気づいていない。ジェイニーちゃんの友達娘は自分が2年もそこにいたと知って驚いた。

という異常事態に気づいたコンビは逃亡を企てるが、途中で捕まる。先生は捕まえた娘を森の木に縛りつけて放置する。すると、そこに、おそろしい怪物さんがうわーっと出てきて、襲われる。カウンセラー先生は森のバケモノの存在を知ってて、洗脳に失敗すると、こうやって女を処分していたらしい。

先生の台詞によれば、彼の奥さんもこのバケモノに襲われて死んだそうな。先生は不貞を働いた妻がガオーとブッ殺されるのを見て、「ありがたやー」と感謝し、「怪物さんは天からの授かりもんだ」と信じている。狂っていますね。いいですね。

怪物さんの由来その他は一切謎であり、まったく説明されない。潔いほどに説明されない。コイツには変わった特徴がある。音に反応するんですよ。音楽/人間がたてる物音/悲鳴。なんでもかんでも音が鳴ると、ぐわーと出てきて、襲ってくる。いったいなんなの。ま、こういうバケモノがいるから、『無言の行』をやってたんですね。そこしかわからない!

そして怪物さんにはもうひとつ特徴があって、赤ん坊を連れているのである。オギャアオギャアと泣く赤ん坊をものすごく大事にしている。珍妙な野郎だ。ママなのかね。たぶん。

最後。

ドタバタアクションの末にみんな死ぬ。友達娘が死ぬ場面は泣けた。あれはよかった。詳しくは映画でどうぞ。

最後の最後。

ジェイニーさんだけが生き残るが、怪物さんが目の前に出てきて、彼女は追いつめられる。逃げ場ナシ。絶体絶命。なにしろ音を立てちゃいけないから、無言でやりすごすしかない。ぢっと息をひそめていればあっちにいってくれるかも。にらめっこ。こわーい。

と、ここで、生きるか死ぬかの瀬戸際に置いて、この女は、やにわ、「ギャァアアアアアアア!」と悲鳴をあげるのである。あー。もうオダブツですね。ズタズタですね。

と、思ったら、なんと、怪物さんはその悲鳴を聞いたら、おったまげて、オギャアオギャアと泣く赤ん坊を抱えて、逃げていくのである。あははははははははは。

なんて笑ってはいけない。『Silent Retreat (2013)』はお笑い映画でなく、これをおおまじめにやっているのですよ。上に書いた「虚を突かれた」というのはこの場面なのであります。

おしまい。

感想再び

上のあらすじでは割愛したが、映画の中盤でジェイニーさんの過去トラウマ話があった。彼女は事故で家族を失った。パパを助けたくても助けられなかった。パパは彼女を動転させないようスマイルしたまんまで死んでいった。彼女は何時間もギャーギャーわめき続けて、んで、やっと助けてもらえた。

という悲しい話が中盤あたりであって、そして、最後に悲鳴をあげる場面では、手に家族写真を握っている。きっとパパの顔を思い出していたのだろう。最後のドタンバになったら、そのときの情景が頭に思い浮かんで、ああするしかなったのだろう。

怪物はなぜ逃げていったのか。わからない。しかし、想像を交えていうならば、もしかして、彼女の悲鳴はパパのオバケを呼んだのかもしれない。怪物の目にはそれがおそろしい怪物に見えたのかもしれない。なんて私は想像したが、絶叫で逃げていく怪物ってどんな意味があるのかね。なにか思いついたら教えてください。

それはさておき、本作『Silent Retreat (2013)』には『歪んだ家族愛』主題がそこはかとなく漂っている。少女を拉致し、洗脳し、理想の服従妻をこしらえようとする狂人。赤ん坊を抱き抱えて人を襲う怪物。家族を失った少女たち。そんな生き物たちが山に集まって、わっせわっせと闘い合っているのである。おもしろいものをみた。

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