!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!
本ページは『映画|プロクシ|Proxy』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓
ネタバレ結末
暴漢に襲われた妊娠女のエスターさんは、じつは、自分から望んで自分を襲わせたのであった。実行犯は恋人レズ女である。このお騒がせ事件は、以下のような動機による↓
彼女は「他人からチヤホヤされたい」という理由で精子バンク経由で妊娠をした。おなかの大きい恰好でよたよた歩いて、知らない人からにっこりされたり、親切にされるのが楽しい。それが目的だから、赤ちゃんは要らない。ゆえに、産まれる直前に、恋人に自分を襲わせ、子供を殺させた。そんなことのために、自作自演計画を実行したのである。
彼女自身の口から上のような告白台詞があったが、これに私の想像も加えると『子供を失ったかわいそうなママ』になりたいという気持ちもあったのではないか。そうすればますます人々の同情を買うことができる。一粒で二度おいしい不幸体験を得られるってわけです。
頭、おかしい!
こんな計画に手を貸した恋人レズ女というのは、前述したように刑務所とシャバをいったりきたりのヤクザ女であるが、これまたトチ狂ってて、「おまえのためにここまでやるのはあたしだけだよ」なんつって、いわれた通りに彼女を襲い、それが愛の証しであると主張するのである。なんという狂愛。
やがてエスターは病院を退院。不幸女が集まるセラピーにいった。そこで、メラニーという不幸女に出会い、仲よくなったが、このメラニーてのが、これまた輪をかけて異常な秘密を持つと明かされる。
こちらは『愛する夫と子供をなくした悲しみの未亡人』という触れ込みでセラピーにきてたんだが、ぜんぶ嘘。夫も息子も普通に生きてて、彼女は平凡な主婦なのである。えー。
この女は「悲劇の女王になりたい」願望が心根にあるらしい。とことんヒデー目に遭って、被害者になって、みんなに同情されて、オイオイ泣きたい!そんなイメージプレイに浸りたい!というじつに困った妄想願望の持ち主だった。ふたりの女の変態性は方向が少し異なるけれども、似ている部分がある。
どいつもこいつも頭おかしい!
ある日、エスターはメラニーの秘密を知る。家族をなくした不幸話はぜんぶ嘘で、本当は幸せな主婦だったと知って驚き、そして、意味深なニンマリ顔をする。それは獲物を見つけた狩猟者のようであり、また、慈愛に満ちた目つきでもある。この意味はおいおいわかる。
エスターは嘘つき女をレズビアン誘惑する。歪んだ秘密を持つ者同士、仲よくやれると思ったようだが、これはだめであった。「あなたは嘘をついているでしょう。本当は子供もご主人もいるくせに」といってやったら、メラニーさんは逆上。「わたしはレズじゃない!もう電話してくんな!」つって出ていってしまう。あー。
怒ったエスターは相手の家に押し入り、バールで子供を殴り殺す。そこにパパ(メラニーの夫)が血相変えてやってきて、ショットガンをズドン。エスター、死亡。
夫にしてみれば、当然の行為である。狂った女が家に侵入し、子供を殺したのだから、彼は罪に問われることはなく、夫婦は子供をなくした被害者夫婦として報道されたが、ニュースではその名前は伏せられた。
エスターは殺される直前、メラニーに対し、「わたしはあなたのためにやったのだ。これでわたしらはひとつになれる」てなことをいって死んでいったんだが、あれは皮肉に満ちた呪詛のようだが、じつは本心だったんじゃないかな。エスターは友達の秘密を知り、「コイツはわたしと同類だ」と直感したんじゃないのかな。ふたりで仲よく悲劇女になって、オイオイ泣きたかったんじゃないのかな。これは私の想像なので、あなたはまた違う風に思うかもしれない。
ねじくれ女の心理描写がおもしろいよね。
ここでまだ映画は中段である。エスターが死んだあとはメラニーと夫の家族ドラマがメインになる。ながらく嘘をついて、悲しい未亡人を演じてきたメラニーさんは晴れて本当の『悲しみ女』になれたわけだが、本人はそれで満足ということはない。フリをするのと実際にヒデー目に遭うのは違うのである。元はといえば、自分がやらかしたいたずらのせいでこうなったわけだから、後悔しきれないほどの重荷を負った。
一方、夫は女たちの秘密なんかなにも知らない。妻がセラピーにいっていたことも知らない。子供を殺した女はナニモノなのか。なぜ自分の子供が殺されなければならなかったのか。まるきりわからないから悩んでしまう。こちらも相当の深手である。夫婦仲はギクシャクする。
ある日、夫はセラピーにいき、そこで妻を知る人物と偶然に出会って驚く。「あなたの奥さんはメラニーさんだろ。子供をさらわれたんだってね。奥さんから聞いているよ」なんていわれてびっくり。妻の虚言歴を知った夫は呆れ、怒り、夫婦ケンカになる。夫は破局を宣言して出ていってしまう。
と、そこに、あのスケバンレズビアン女がトンカチを持って乱入してくるのである。すごーい。まさに修羅場。
スケバン女は愛する恋人(エスターさん)を殺された恨みを晴らそうとやってきたわけだが、そこでドタバタやるうちに、2階の部屋でなにかを目撃して凍りつく。そこで彼女がなにを見たのか、観客にはわからないんだが、おそらく夫の死体があったのだろうと推察される。映画の中では明かされないが、夫婦喧嘩の末に夫を殺しちゃったのだろう。
嘘つき女のメラニーさんはショットガンを構えてニタニタ笑いをする。彼女の脳裏には、筋書きができている。こんなの↓
「恋人を殺された逆恨み女が乱入してきて夫を殺した。私はひーこらいって反撃してなんとか倒すことができたのだ」
そんな風に説明をすれば、自分は罪を逃れられる。そして、さらに、彼女の脳裏には未来の自分が見えている。悲劇の未亡人として大売り出しで、本を書いたら大儲けで、セレブの仲間入り。悲しみを乗り越えて再婚を果たし、いまは誰もがうらやむ幸せな結婚生活を手に入れましたよ。新しい子供を妊娠したんですよ。
そんな夢物語が頭の中にわいて、うれしげにショットガンを構える。ほんとにそんな風にうまくいくんでしょうか。
おしまい。
ものすごい話だー。
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