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!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!

ネタバレ注意!SPOILER ALERT!

本ページは『映画|エビデンス 全滅|Evidence』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓

ネタバレ結末

溶接マスクキラーの正体は、ハリウッドに憧れるカワイコちゃんコンビだったのであります。えー。びっくり。

彼女たちは最初からぜんぶ計画した。シャトルバスの運転手を買収&ルートを変えさせ、事故が起きるように工作し、みんなを廃墟におびきよせてブッ殺した。現場に残した映像は、彼女たちが意図的に編集したものだった。

その動機は、ビデオでしゃべった通り『映画をつくること』である。この場合の観客とは、警察であり、テレビやネットで動画を見る人たちです。

Leann: You and me are gonna make a movie together one day. Just you and I. It's gonna be a masterpiece.

「ふたりでいつかいっしょに映画をつくろうね。傑作になるよ」

リアンさんのこの台詞はそういう意味だった。夢見るアーパー娘コンビじゃなく、夢見るキチガイコンビだったのです。

私は、このオチには本当に驚いたけれども、冒頭のカレシの話はへんだと思いましたよ。上のあらすじでは割愛しましたが、旅に出る前、小さなハプニングがあったのです。こんなの↓

女優の卵のリアンさんは小さな舞台で主役を演じた。大喝采を浴びていいきぶんになったが、そこでカレシが想定外のことをやらかした。彼はギターを弾き、恋の歌をうたいながら出てきて、観客の前でプロポーズをした。彼はかっこよくキメたつもりだったが、リアンさんは困り顔になり、断った。彼は傷心し、どっかにいっちゃった。ふたりの娘は「こまったこまった」つって、優しい内容のビデオレターを録画した。

「あなたをきらいじゃないの。ただ気持ちの用意ができてなかっただけ。ごめんなさい。いっしょに旅をしたら、わたしのきもちも変わるかもしれないワ」

翌朝、カレシはふてくされ顔で戻ってきた。

という小話が冒頭にあったんだが、これはかなりへんだった。女優を夢見る女はギター弾きのカレシを捨てるのが普通じゃん?どうしてわざわざ呼び戻すの?と不思議だったが、つまり、これは、彼を犯人役に仕立てるため、来させる必要があったんですね。後半には、リアンとカレシが口論する場面、彼女が彼を襲う場面が入っています。こわいこわい。

このオチを知った上で、映画を見直すとかなりおもしろいのですよ。夢見る女コンビの夢見る台詞のことごとくが、じつはキチガイコンビの殺人宣言だったというのがよくわかります。脚本が巧みだった。すごい!えらい!

この映画はいつか日本版が出るのかなと思うが、字幕翻訳者の方にはがんばってもらって、そこをきちっとわかるように翻訳してもらいたい。

ところで、大金を抱えて旅をする怪しいオバちゃんですが、最初は彼女の夫が犯人ではないかと疑われました。刑事は彼女のバッグが軍隊のものと知り、その名札を読んで、夫にたどりつく。夫は元イラク兵で、PTSDと診断された。銀行預金を調べたら、預金が全額9万ドル引き出されていた。

という状況からして、病気の夫との生活に疲れたオバちゃんが家のカネを奪って、逃げてきたんだな。夫が怒って追いかけてきたんだな。という推理をしたんだが、これは間違いだった。後に明かされる話は、少し違っていた。こんなの↓

イラクにいってPTSDになった夫は病院通いをしていたが、やがて彼はガンと診断された。死ぬまで妻の重荷になることに耐えられない夫は1週間前に拳銃自殺した。遺書には「せめて彼女には残された時間を楽しんでほしい」と書かれてあった。

つまり、この女は夫に死なれて、もうどうでもいいや気分になり、家のカネを全額おろし、べガスに行こうとしたんですね。派手に遊んで死んじゃおうと思ってたんじゃないかな(そこまでは触れられてなかった)。でも、その途中で、殺人者に追われるハメになった。変なババアだったけど、かわいそうなひとだったんですね。

彼女のダイイングメッセージが映画の後半で出ます。告白話をした後、呪詛に満ちた台詞を吐くんだが、これが殺人コンビのことを引き合いに出しているような内容でおもしろい。彼女の大金は殺人コンビのボーナスになったのだろうと思うと、ますますあの台詞が活きてくる。

その後、いろいろあって、二転三転するんだが、警察は犯人が意図した通りにミスリードされる。おまけに、警察しかアクセスできないはずの証拠ビデオがさらされる。メンツ形無し。

動画を出したのは、レイチェルさんだった。彼女はじつは現場から立ち去っていたのです。「死体の数が合わないではないか。どうして警察は気づかないんだ」という疑問が出るが、死体はひどく損傷しバラバラだったので気づかなかった、ということだと思うが、ここは苦しいところではある。ちゃんと調べれば、人数くらいはわかりそうなものだよね。

先に生存者は2名と書いたけれども、重傷者は犯人役に仕立て上げられたギター弾き男で、無傷の方は、殺人コンビの片割れのリアンさんだった。リアンさんは、ピーピー泣いて、被害者のフリをしたあと、しれーと警察署から去り、レイチェルさんと合流したのでした。ふたりはイエーイとガッツポーズ。

そんなことを知らないラダ・ミッチェル演じる女刑事は「犯人がわかりましたよ」つって、堂々と記者会見をする。そこでまた、次の流出動画が出る。マスコミ騒然。ポリスはズタボロ。

その瞬間、スティーヴン・モイヤー演じる刑事が「グリッチとタイムコードがナントカ」つって、ビデオが編集されていることにやっと気づいたんだが、遅すぎ。

最後の流出動画は、削除された未公開シーンです。溶接トーチ殺人者の正体はハリウッドに憧れる娘コンビだったと明かされる。刑事たちを口をあんぐり。やっとすべてを理解して悔しがるけど、もう間に合わない。ふたりとも遠くに逃げちゃったんですよ。

未公開シーンのエンディング。

ハリウッドのどこかの高級スイートで戯れる犯人コンビの勝利宣言です。カワイコちゃんのコンビがニコニコ顔で出てくる。

girls: That's it. Thanks for watching. Remember, the next time someone's filming you, You could be in the sequel.

てわけだったのよ。見てくれてありがとうね。いつか続編ができたら、そのときはあなたが出演者になるかも。きゃは!

コンビは自分たちの夢を叶えてハッピーエンド(?)。

おしまい。

感想再び

脚本が巧みだ!と書いたが、と同時に、アラも多い。

このコンビは周到に準備をしてこれをやったんだが、不確定要素も多かったはず。どんな乗客が乗ってくるかわからないし、彼らがどういう行動をするかもわからない。そこを機転とビデオ編集で乗り切って、まんまと警察をだまくらかしたってことだが、ちょっとねえ、むりだよねえ。

ギャーギャーわめいたり、ピーピー泣いたりしていたのはぜんぶ演技だったってことじゃん。おまえら、うますぎるわ。

でもさ、こんな知能犯のくせに、こんなことをやらかして、堂々と顔さらして、そこらへんのホテルで遊んでいたら、すぐにお縄になっちゃうよね。モロバレじゃん。頭がいいのか悪いのかわからない。

といった疑問点が出るが、細かいことは気にすんな!ということなのだろう。わかりましたよ。

でもさ、それはいいが、「ギター弾き男が犯人だ!」ていうところで「だれが動画を流したのか」「どうして16歳坊やの口の中にメモリカードがあるのか」(犯人がそのようにしたんだが)という点についてなんら不思議に思わず「犯人わかった!」ていうのはダメすぎではないか。

特に、女刑事はいちどポカをやってるのです。もう少し慎重にやればいいのに、嬉々として記者会見をやって、大恥をかいているのがバカだなあ。そんな調子だからあんな小娘風情にヤラレちゃうんですよ。続編をやるんなら、こんどはもうちょっと頭のいい刑事さんと対決してもらいたいですね。

運ちゃんはどうなった?

運ちゃんは死んだのかどうかわからない。彼は前科者でコンビの協力者だったと最後に明かされた。彼は利用されてブッ殺されたんだろうという風に思えるが、殺されるシーンは出てこなかった。しかし、もしそれがあったとしても、ビデオが編集されたとわかった以上、どうにでも解釈できる。警察は死体の数/身元を把握できていないし。もし続編がいつかできるなら、あのオッサンはしれーと再登場するのかもしれません。

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