PV9,305

!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!

ネタバレ注意!SPOILER ALERT!

本ページは『映画|月に囚われた男|Moon』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓

ある秘密が徐々に明かされていくんだが、バッサリまとめるとこうである。

サムはクローンなのであった。「自分は3年契約にサインした労働者で、地球に帰れば美人妻が待っている」というのは移植された記憶である。なぜわざわざこんなことをやるかというと、3年おきに新人を雇用し、そいつを訓練し、月と地球を往復するという一連のコストを考えると、クローン人間にやらせたほうが安くてべんりという企業の方針なのであった。

3年おきにクローン人間が入れ替わって記憶が移植されるはずなんだが、サムが基地の外で作業しているあいだに物理的な事故が起きたことにより、クローン同士が鉢合わせしてしまうという予期せぬ事態になった。本来、このような事故が起きた場合には、AIロボットのGERTYが地球本部に連絡し、次のクローンを覚醒させる。新クローンは自分が助けてもらったと信じるようになる。と同時に、連絡を受けてやってきたスタッフが事故死したクローンを密かに回収するという手順があるんだが、GERTYはロボットらしくその手順を踏んだのだが、あとに出てきたクローンがルール破りの行動をして外にいたヤツを助けちゃったのである。

てわけでクローン同士が鉢合わせしたわけだが、彼らは自分を人間だと信じているので「おれがサムである」といいだしてケンカになる。ふたりはムカムカのし通しだったが、やがて真実を知る。基地内に隠し通路があり、そこに入ってみたら、何十何百のクローンサムが眠っているのを見ちゃったもんで、事実であると認めざるを得なくなった。

地球と交信ができないというのはじつは嘘ではないかと考えたふたりは外に出て調べてみる。そしたらやっぱり妨害電波を出すタワーがあった。クローンの片割れがタワーの範囲外から交信を試みたところ、見事に地球とつながった。彼は成長した自分の娘を見て驚き「ママは死んだ」と聞かされて悲しんだ。詳しく聞こうと思ったら、相手は横を向いて「パパー!」と呼びだしたのでおそろしくなり会話を中断した。つまりオリジナルのサム・ベルは地球にいて平凡な暮らしをしているのである。

ふたりのクローンは互いに相手のことを不憫に思う。まさに『同病相哀れむ』である。もうすぐ企業が派遣したレスキューチーム(じつは事態回収チーム)が月にくる。彼らがこの状態を知ったら、ふたりはホイと抹殺されるだろう。それはあまりに悔しい!

サムがサムにいう。「おまえは3年間がんばったのだから地球に帰る資格がある。おまえを戻してやる」といって、作戦を述べた。『ヘリウム3』のロケットは小型ながら人間がひとり入るくらいの隙間がある。そこにもぐって逃げろという話だが、いわれたほうのサムは血を吐いてガタガタ震えており「おれはもうむりだ。こんなんじゃ娘をこわがらせるだけである。おまえがいけ」と辞退した。彼の健康状態が極度に悪化しているのは、3年間のクローン寿命が尽きかけているせいである。

健康サムは死にかけサムを外に運びだし、サムが死んだとされている場所に置き、GERTYにお願いして新しいクローンをひとつ持ってきて、覚醒するようにセットした。レスキューチームをだますためである。さらに最後に妨害電波のタワーを破壊工作。これで次のクローンもなにが起きているかを容易に知るであろう。ここまでやったら、『ヘリウム3』のロケットに乗って地球へGO!

レスキューが到着。彼らは基地外のクローン死体を発見する。

基地内では、次のクローンが覚醒。彼の記憶は事故のあとから始まる。「ナニがあったのだ?ここはどこだ?」と見回す彼に、GERTYが「あなたは事故にあったのですよ」と答える。

ラスト。

地球の映像をバックにナレーション。

「サム・ベルのクローンはルナ・インダストリーズ (Lunar Industries) の実態を暴露する証拠書類を当局に提出した。同社は世間の非難を浴び、その株価は大暴落」

おしまい。

※メモ。

クローンサムが逃げることができたのは、GERTYのアシストがあったからなんですが、このAIは企業の味方のはずなんだけど、サムに「おれを助けるのがきみの仕事だろ?」といわれて、その通りにやってくれたのですね。秘密のパスワードを教えてくれたり、クローンを覚醒させるのを手伝ったり。最後には「わたしはぜんぶ記録するようにつくられているから、工作してもあとからバレちゃいますよ」なんてアドバイスもくれました。こんな善良AIをつくるくらいだから、Lunar Industriesってそんなに悪い会社じゃないのかも?

DVDのSpecialに入っていたダンカン・ジョーンズ監督の話によれば「オリジナルのサム・ベルは移植目的の記憶を企業に売ったんで、たくさんの報酬をもらって地球で平和に暮らしている」だそうです。

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