PV1,418

!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!

ネタバレ注意!SPOILER ALERT!

本ページは『映画|ラスト・カインド・ワーズ|Last Kind Words』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓

ネタバレ結末

冒頭プロローグで父を射殺した少年は子供時代の地主。地主が目撃した首吊りガイコツとオバケの正体は、地主の先祖が殺した黒人奴隷だった。ご先祖様がやらかした過ちゆえに、呪われてパパを殺しちゃったというのがプロローグの真相。そして、そこにいた少女は地主の妹のアマンダである。

その後、なぜ彼女がオバケになっちゃったのかのは、以下のような事情による。

地主は子供の頃から妹を大好きだったが、後年、近親相姦的な異常な愛を抱くに至り、キモいお兄ちゃんになってしまった。当時、アマンダには好きな男がいた。それがイーライの父。ふたりは愛し合い、いっしょに田舎を出ていこうとしていたんだが、地主が邪魔をした。ここで何が起きたのか、具体的には明かされない。アマンダオバケの「あなたはひどいことをした」という台詞があるだけだが、おそらくレイプして殺したか、悲観した彼女が自殺したのか、そんなところだろう。

アマンダが死んだのは大昔の奴隷が死んだのと同じく、森の中での首吊りだった。同じ場所で同じようなことが起きるというのは、やはり呪われた土地なのだろう。アマンダの死体はいまもガイコツ姿で森の木にぶらさがっている。

イーライ父はそんな事情を一切知らなかった。アマンダが森の中で死んでるなんて思わず、彼女に捨てられたと信じ込み、あきらめ、別の女と結婚した。それがイーライの母である。

知らなかったとはいえ、あれだけ地主を嫌っていたというのは、なにか本能的に感じていたのは事実だろう。父が怒りっぽいのは、いまも過去に縛られているからだろう。こんな彼と結婚した妻は、彼を憐れみ、いっしょに幸福になりたいと願ったのだろう。

一切合切の過去の秘密がアマンダオバケの口から暴露され、それがイーライ父の耳に入ると、彼は逆上。積年の怨念を晴らすべく、地主に突撃する。口論の末、もみ合いとなり、父はバルコニーから転落死亡。事故として処理された。これでまた地主の罪がひとつ増えた。

てわけで、一見親切ゲに見えた地主男の汚い過去が明かされたという次第だが、彼は悪人かというとそう単純でもない。地主はすべてを悔いている。妹に懺悔をし、ご先祖様が犯した罪を懺悔し、許されることを願っているが、その実、いまにおいてなお、妹への欲情を捨て切れないでいる。

地主は裕福そうに見えるが、じつは借金がある。彼の家にはたくさんのアンティークがあるんで、それらを売れば解決するんだが、ぜったい売らない。それらを手放したら自己崩壊すると信じているみたい。彼の家には古いものがたくさんあるが、中には売れないガラクタもある。その昔、先祖が殺した奴隷の靴とか。そういうものを背負い込んで、彼は生きている。地主は煩悩の過去コレクター。

こんな複雑キャラを演じたブラッド・ドゥーリフの演技はすばらしい。彼はオバケに土下座するんですよ。

さて、イーライ父が死んでいちばん気の毒なのは、イーライ母である。彼女は(実際はちがうが)アマンダに捨てられた夫に愛ひとすじで尽くしてきたのであるが、こうなってみれば、アマンダオバケに夫を取られた格好である。生きる支えを失った彼女がピーピー泣いて地主にすがろうとするのが哀れ。地主は「あなたにはイーライがいる」といって励ました。

こんな家族の過去話を知ったイーライはどんな風かといえば、彼はもうこの世に未練はなくなって、美女オバケのアマンダの虜になる。牡丹灯籠の新三郎さん状態。こんな台詞をいう↓

Eli: I want to stay here forever. Become like you.

「ぼくも君と同じようになって永遠にこの森にいたい」

最後は、イーライとアマンダオバケがデートしているところに、地主が血相変えて怒鳴り込んでくる。彼は怒り、土下座をして許しを請い、拒絶されると、アマンダの首吊りガイコツにくっついて首吊りしちゃう。

説明が遅れたが、この映画では、森で首吊りすると森をさまようオバケになるんだが、誰かがロープを切って死体をおろすと成仏できる(完全に消滅する)というキメなのです。この点が小さな傷であるように私には思えるんだが。

地主がそのように死んだということは、つまり、彼はオバケになってアマンダといっしょに森に居続けるという意味であり、これはアマンダオバケにとっては耐え難い話である。彼女はイーライに「ロープを切ってくれ!」と頼む。

Amanda: If you love me, kill me.

イーライは迷った末に彼女の願いを叶える。彼はアマンダを助けると同時に彼女を失った。地主の死体を始末し、靴だけを持ち帰り、地主の屋敷にいき、靴を奴隷の靴の隣に置いた。

これで話は終わらない。この後、イーライは首吊り自殺。彼はアマンダの後を継いで、森をさまようオバケになった。

時は流れて数十年後。

現在、農場の持ち主は老いたイーライ母である。地主は死ぬ前に彼女に財産を譲った。彼女は第2の地主になった。そこに若い3人家族がやってくる。年頃の娘が珍しげに散歩するところを、イーライオバケがぢっと見ている。かつてアマンダがイーライにしたように。

おしまい。

ところで、イーライが町に住んでいた頃の幼なじみ女はイーライに惚れており、何度も会いにきていた。この娘はこの映画で唯一の陽気な人なのかなと思ったが、彼女もまた家族関係の悩みを抱えていたと明かされた。彼女はイーライに「いっしょに逃げよう」と誘うんだが、受け入れてもらえなかった。これもまた哀れであった。

イーライが最後に死んじゃうというのは、意外に思う人が多いだろう。いくら好きな女が死んだといっても、相手はオバケだし、彼には母がいるし、幼なじみ女もいるではないか。あれも見ようによってはかわいいではないか。といいたくなるところだが、その後、オバケになって森をさまようところを見ると、この森自体に不思議な作用があって、人間の運命を歪める力が働いているのかなという風に思え、なんとなく納得しました。

この映画の記事に戻る↓