2014/1/29 (Wed) at 1:25 pm

映画|吸血(Sanguivorous)

この狂おしい吸血を見よ。幻想耽美アングラ風味エロスのヴァンパイア世界を描いたインディーズホラー映画。柿澤亜友美室伏鴻足立昌弥吉永睦子。監督吉本直紀。2011年。

吸血(Sanguivorous) DVDDVD画像

ここは東京。

ゲホゲホと血を吐く病弱娘(柿澤亜友美)が登場。彼女にはオカルト好きの恋人(足立昌弥)がいる。そいつが本を手にヴァンパイアの話をする。

500年前に死んだルーマニアのヴァンパイアの棺が、船で日本に運ばれてきたという。どっかの誰かがそれを手に入れ、処女をさらい、処女の血を捧げる儀式をやったら、ヴァンパイアはジャジャーンと復活。その場にいた者たちをぜんぶブッ殺したそうな。

さらに、言い伝えによれば、その処女、でなく、処女だった女(儀式でナニされちゃったから処女ではなくなった)だけは生き残った。彼女は半人間半吸血鬼としてこの世をさまよい続け、呪われた血は潜在し続け、sexする度に同類を増やし、そして、ある日、暗黒の本能が目覚め、吸血鬼たちが一斉に人間を襲う。

恋人男はこんな伝説をうれしげにしゃべる。女は「ふーん」と興味ナサゲに聞いていたが、じつは、その彼女が吸血鬼の血を引き継ぐ者だったんですよ。

娘は幽闇たる冥府の間に導かれ、彷徨の末、血脈で結ばれた先人たちと遭遇する。老人吸血鬼(室伏鴻)と鬼婆吸血鬼(吉永睦子)は彼女を迎えるが、彼女を追ってきた恋人男もそっちの世界に入れてくださいよと懇願するも、その願いは届かず、ズダーンとギロチン処刑される。

幽玄流血懊悩肉体殺傷グゲェええエ耽美アングラ地殻変動エロスのヴァンパイア異元世界を描いたインディーズ映画。この狂おしい吸血を見よ。

トレイラー動画

吸血 (Sanguivorous) (2011) trailer

感想

「ムルナウのノスフェラトゥ・ミーツ・暗黒舞踏!」

新藤兼人の『鬼婆 (1964)』みたいな雰囲気もあるなあと思った。サイレント映画風のつくりになっています。見た直後にtwitterにこう書いたら↓

こんな返事がきた↓

なるほど。人によって微妙にちがうんだなあって思った。彼のレビューはおもしろいから読ませてもらうといいですよ↓

吸血(Sanguivorous) (2011)』はインディーズ映画なので、色々と安っぽくて、変わっていて、万人向けとはいえないが私は好きである。最初のへんはかなり地味。そこで落胆しかけたが、途中からぐわーんとおもしろくなり、ギロチン以後はノリノリ。何度もイカされてしまいましたよ。

よくわからない夢世界を描いているので、この映画を好きになるかどうかは、お話どうこうよりも、映像と音にノれるかどうかだろう。どう感じるかはお好み次第だが、ヴァンパイア映画に必須なもの『退廃のエロ』『狂おしい吸血』がこの映画にも確かにあったと思う。

室伏鴻の舞踏はすばらしかった。あれを見るだけでもDVDを買う価値はある。ヴァンパイアの狂おしさというものを、言語を超えて昇華していた。地下深くで覚醒したクトゥルフの古代神のようでもある。あの場面ではビルが揺れる映像がチラと挿入されるが、ほんとに地球が揺れるのではないかと思った。

室伏鴻の身悶えヴァンパイア
室伏鴻 画像

見てないひとには「ヴァンパイアでクトゥルフ?なんのこっちゃ?」と思われるだろうが、ほんとにすごいんだから。DVDのメイキングで監督さんが「あれを眼前で見れたのは大きな喜びであった」みたいなことをしゃべっていたが、確かに、あの舞踏を生で見たらすごい衝撃だったろうと想像した。

もうひとつおもしろかったのは、この映画独自の(なのかな)3度目ルールである↓

「三度目の血を吸う吸血鬼が、吸われた者の主人となる。永久に結ばれる...」

この設定は興味深い。ヴァンパイア映画というのは、細かい設定が映画によって変わるものである。ヴァンパイア化するためのルール/ヴァンパイアを殺す方法/吸血した者とされた者との間で絆ができるとかできないとか/等々。

私は数あるヴァンパイア映画の差異に着目し、見比べるのが趣味である。「もしこのルールをこっちにあてはめたらどうなるか」とかさ、考えるのが好きなんだよね。『映画によって違うヴァンパイアルールブックまとめサイト』をつくろうと何年も前から考えている。この企画が頓挫しているのは痛恨の極みである。話がそれてすません。この映画の『3度目ルール』はなかなかおもしろいんですよ。

『初めての吸血』を『初めてのsex』に置き換えてみよう。一般的な話、初回というのはせわしないものである。幸運なひとはそこに『愛』を感じるのだろうが、たいていはドタバタして、ヒャーとかいって、なんだかわからないうちに終了してしまうものだ。2度目においても、まだドタバタ感がある。3度目になると、ようやく落ち着くことができ、相手の反応を確かめることができ、交わりと呼べる行為になるのではないか。

私はそんな連想をし、この映画の『3度目ルール』に自分なりの意味を見い出した。『3度目にして契りを結ぶ』というのは良心的なプランだと思った。でもこれは私の想像に過ぎない。なぜ3度目なのかは、監督さんに訊いてみないとわからない。

ともかくも、この映画の『吸血』は闇のsexを想起させ、なんだかヤらしいなーと感じた瞬間、ハッと気づかされる。こいつらは死んでいるのだ。生を謳歌することなどいくら希っても叶わない、懊悩する魔物たちなのだ。という着想に射たれる。私はそんな質感のヴァンパイア映画が好きだ。

リンク情報等

こちら公式サイトです↓

『吸血(Sanguivorous)』公式サイト
『吸血(Sanguivorous)』公式サイト

こちらはtwitterアカウント↓

以下のページは2010年に東京で上映されたときのトークショーの内容で、作品を理解する上でおもしろいが、私的には、映画を観てから読んだほうがいいですよって思ったけど、プレトークだからべつにいいのか。私は観る前にこういう話を聞かされるのが好きじゃないんですけど。

US版DVDのオマケ

吸血(Sanguivorous) (2011)』は日本映画だが、いまのところ、日本版は出ていない。USのTidepointていうところからUS版が去年11月に出た。私も買った。US版だけど台詞は日本語をしゃべってるから、英語が苦手な方もオッケーです。

吉本直紀監督はこんなひと
吉本直紀 / Naoki Yoshimoto 画像

DVDには、吉本直紀監督の『Nowhere』ていうショートフィイルムと、メイキングが入っている。メイキングでは、監督とキャストのみなさんが出てきて、英語でしゃべっている(US版なので日本語字幕はない)。以下は監督さんが室伏鴻について話しているところ↓

Naoki Yoshimoto “To me, Ko is like really a dark figure, I remember one night when I first met him, I saw his performance, I thought he really is, you know, came from darkness or something. So he's got the great character that inspires me, so why not him being a vampire in darkness. And he did great.”

日本語訳 by 私↓

室伏鴻は闇の人物である。彼のパフォーマンスを初めて見たときの印象は鮮烈だった。彼は暗闇からやってきた人だと思った。彼のキャラクターは私をインスパイアさせ、ヴァンパイアを演じてもらおうと決めた。彼はすばらしい演技をした」

メイキングの中では他にも色々と興味深いお話が聞ける。映画を観てからこれを見ると、いっそう理解が深まるだろう。この映画を見てみたいひとはDVDを買おう↓

日本のアマゾンでも売ってた↓

画像

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原題: Kyuketsu
別題: Kyuketsu
Sanguivorous
邦題(カタカナ): 『吸血』
制作年: 2011年
制作国: 日本
公開日: 2011年 (日本)
imdb.com: imdb.com :: Kyuketsu
  • 暗黒舞踏と吸血鬼の狂宴『吸血(Sanguivorous)』は現代の稀人譚だ - 1953ColdSummer

    吸血(Sanguivorous) 2011(2010)/日本/アメリカ 監督/吉本直紀 出演/室伏鴻/柿澤亜友美/足立昌弥/吉永睦子   暗黒舞踏、てなものは映画の中でしか存ぜぬし、積極的に知ろうとしない限りは特に生活に介入してくる事も無いので鹿十を決め込む。てえのが真人間のあるべき姿、仕事に行って帰って安酒呑み喰 ...

    2014/8/11, 4:20 PM

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