2014/2/12 (Wed) at 11:07 pm

映画|24 Exposures

サプライズ』『V/H/S 1 + 2』でおなじみのアダム・ウィンガードが、エッチでフェティッシュなカメラマンを演じるスリラー映画。サイモン・バレットヘレン・ロジャーズ。監督ジョー・スワンバーグ。2013年。

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ビリーさん(アダム・ウィンガード)はフェティッシュ写真家。

本人が自分の作品をpersonal fetish photosと称しているからフェティッシュ写真家なんだが、その作風は、SM女王様がムチを持ってバシバシ、なんてものではない。

彼の主題はゴア死体。水辺で発見された死体とか、バスタブ自殺女とか。モデル女に死体メイクを施し、ポーズを決め、ソレ風の写真を撮る。ホラー映画のスティル写真みたいなものといえばわかりやすいだろう。

つっても、この男はガチの死体愛好者などではない。写真を撮るためにネーチャンを拉致してどーこー、なんてことはやらない。本人の性的嗜好は至ってノーマル。ホラー映画の制作者がやるように、よくできたつくりものを製作し、写真を撮影するのが楽しいだけである。こんな役をアダム・ウィンガードが演じているから、現実の彼と雰囲気がダブってしまいますね(という点はこの映画の隠し味であるたぶん)。

ビリーさんには恋人(キャロライン・ホワイト)がいて、ふたりは作品づくりのパートナー同士である。死体役をやるのは素人風のモデルさん。モデル娘は「なんかおもしろそうじゃん」つって、バイト感覚でやっている。

ビリーとその恋人の関係は、誠に以て円満である。仕事は楽しく、ふたりは仲がいい。彼らはモデルとも仲がよく、撮影以外でもよく顔を合わせ、和気あいあいとビールを飲み、ときには、その場のノリでアハーンと3Pをやったりする。ビリーはふたりの女に朝めしをつくる。のんきなもんです。

こんな調子でおきらくにやってたところに、新人モデルのカワイコちゃん(ヘレン・ロジャーズ)が入ってくると、彼らの均衡というものが、水面下で微妙に崩れていく。

新人さんには嫉妬深いカレシ(マイク・ブルン)がいて、自分の恋人がへんな写真家のモデル仕事をやるなんて到底許しがたい話であるから、べちべちと文句をいう。また、新人さんが加入したことにより、これまでメインでやっていたモデル娘(ソフィア・タカール)が悲しんだりする。表面上は穏やかながら、なにやら嵐がきそうな予感。

というお話が進みつつ、別のサブストーリーが進行する。

殺人課の刑事(サイモン・バレット)が登場。彼はShannon Fiermanなるモデル女が死んだ事件を捜査している。彼には別居中の奥さんがいて、なんとかヨリを戻したいんだが相手にしてもらえず、不幸な暮らしを送っている。おきらくカメラマンのビリーさんとは対照的。

ある日、その刑事がビリーのところにやってくる。死んだ女の知人としてビリーの名前があったから話を聞きにきたんだが、ビリーもその恋人もその女を詳しくは知らなかった。過去にいちどだけモデルになってもらおうと連絡をしたことがある。でも、結局、雇わなかった。チョロッと電話でしゃべっただけだから、知り合いとはいえない程度の間柄である。

ビリーにしてみれば「関係ネーヨ」と追い返してもいいんだが、彼はじつに親切な申し出をする。「こんどスタジオにきたらいいですよ。スタッフの中には、死んだ女性を知ってる人がいるかもしれない。みんなに聞いてみたらいい」とかいう。刑事はいわれた通りスタジオにやってくる。これをきっかけにビリーと刑事は飲み友達になる。

こんな人当たりのよさというのが、ビリーという男の芸なのだろう。モテモテの写真家と不幸な刑事というのはまったく接点がないように思われるが、ビリーにしてみれば、殺人課の刑事、という人種に興味を惹かれたのだろう。彼はつくりもの死体の写真を撮る写真家なので、刑事がアドバイザーになってくれたらいいよね。

そうこうやるうちに、ガチな殺人事件が起きてみんなはびっくりする。ちょっと変わった趣のスリラー映画ですよ。

トレイラー動画

24 Exposures (2013) trailer

感想

女の裸を撮るカメラマンって2種類いると思う。

プロのモデルを使って情景をつくりこんで撮影するタイプと(そういうひとって仕事が早い)、素人風のモデルを使ってハプニング的な絵を撮るのが好きな、いわゆる快楽重視のタイプがいるが、この映画に出てくるビリーさんは、前者のつもりでやってるのが、ちょくちょく悪い虫が出てきて後者になってしまう。そうなるとエッチが目的なんだか写真が目的なんだかわからなくなる。というタイプです。

完璧に後者に属するカメラマンで、定期的にモデルと駆け落ちして行方不明になる人を私も知ってるが、いっちゃ悪いが、そういうのってたいていが二流ですね。本人はアラーキーみたいな大芸術家になったつもりだからたちが悪い。まぁいいや。

感想を書きます。

近年ノリノリのアダム・ウィンガードが監督ではなく主演をしているスリラー映画は、去年のFantasiaで上映され、ちょっと話題だったので楽しみに見ました。

アダム・ウィンガードのみならず、監督のジョー・スワンバーグ、刑事を演じたサイモン・バレット他、キャストもクルーも『V/H/S シンドローム (2012)』『V/H/S ネクストレベル (2013)』『サプライズ (2011)』(原題『You're Next』)の関係者がたくさんクレジットされている。完全に『いつものメンツ』です。

制作者の顔ぶれは変わらないが、その作風は毛色がちがう。この映画の持ち味はグログロギョエーなゴア描写などではなくてですね、この監督独特の変わった演出なんだと思った。

しばしば意図的なミスリードが仕込んであり、観客の心に妙な不安感を呼びつつ進行するという、じつに危なっかしい趣向でこしらえてあるが、ギリギリのセンで均衡が保たれていた。こういう狙いはよく破綻するが、この映画は数少ない成功例のひとつだろう。

結末を見たらば、アダム・ウィンガードサイモン・バレットが出演しているのは、隠し味的な意図があるのだろうと感じた。ビリーのやってることを見ていると、アダムさん本人とイメージが重なる。彼はいつもこんな調子で映画をつくっているのかななんて思ってしまうじゃん。

監督さんは観客にそんな連想を起こさせるために、わざとこんなキャスティングをしたんじゃないのかな。確かなことは本人に訊いてみなければわからないが、映画の中でチラと出るビリーさんのフルネームはWilliam Wingardであるという点からしても、そうなんじゃないかな。

最後にはメタフィクショナルなエンディングが用意されている。なんだかケムに巻かれたような、人を食ったようなオチなんだが、メタフィクショナルというのはあくまで技法なのだから、果たして監督さんは何をいいたかったのだろうと考えさせられる。私は、ビリーと刑事のバーの会話を思い出し、これはハッピーエンドなんだなと思った。

ジョー・スワンバーグ監督について、私は、アダム・ウィンガード関連の映画しか触れたことがないんだが、他にもいくつかつくっていて、熱心なファンの話によれば、この映画みたいに人を食ったような作風が彼の持ち味らしいです。なかなか味わい深い。こういう作品はメガヒットにはならないけれども、ひっそりとファンが増えていくんじゃないかな。ウィンガード一派の隠し球タレント。私、このひと好き。監督さんも最後にチョロッと登場します。彼が演じるのはエージェント。なんのエージェントかは映画を観て確かめてください。

24 Exposures (2013)』はただいまiTunesUSで公開中。

ヘレン・ロジャーズさんはかわいい!

この映画でカワイコちゃんモデルの役で出てくるヘレン・ロジャーズは、『V/H/S シンドローム (2012)』でビデオチャットをやりながらギャーギャーわめいていたネーチャンだが、この映画でもよい脱ぎっぷり。乳輪を見よ。

彼女は、先日、一等賞が決まったABC・オブ・デス2のMの部コンペの応募作品の中にも出ていました。脱ぎはないですが↓


M is for Misdirection from Antonio Padovan on Vimeo.

アダム・ウィンガード関連かんたん感想

個別に記事をアプしなかったので、ついでながら、アダム・ウィンガードの過去作品について簡単に感想を述べます。

V/H/S シンドローム (2012)

「I like you.」のバケモノ女とか、ギャーギャーわめくビデオチャット娘とか、グッとくるポイントはあったが、総じて、ガチャガチャ映像を見るのが辛くて難儀だった。公開当時「なんでこんなに流行ってるのかな」と思った。作品の詳しいクレジットはWikipediaがわかりやすいです↓

V/H/S ネクストレベル (2013)

前作よりもぐっとおもしろくなった。『めんたま移植カメラ(アダム・ウィンガード)』『公園ゾンビ(グレッグ・ヘイルエドゥアルド・サンチェス)』『インドネシア人カルト(ギャレス・エヴァンスTimothy Tjahjanto)』『どんちゃんパーティにエイリアン乱入(ジェイソン・アイズナー)』の4作品はどれも見ごたえがあった。よっつともおもしろいが、最後のヤツがいちばん好き。この映画はPOV好きじゃない私の目を開かせてくれた。

こんなSpecial Editionも出ています↓

サプライズ (2011) (You're Next)

近年のホームインベイジョンホラーの中で、私的には、ダントツトップである。You're Next以前のアダムさんは「ちょっとおもしろい若手」くらいの印象だったが、この映画を経て、ぐーんと存在感を増したように思う。アダム・ウィンガードにとっての『You're Next』は、イーライ・ロスにとっての『ホステル』、あるいは、アダム・グリーンにとっての『HATCHET/ハチェット (2006)』と同義といえるのではないか。劇場で見なかった方もDVD/Blu-Rayが出たら見るといいですよ。日本版はまだ出てないみたいです。

ビューティフル・ダイ (2010) (A Horrible Way to Die)

上記作品の大ヒットで彼の注目が高まったから、過去作品も日本語版が出るようになった。私はこれは未見。みなさんのレビューを読むといまいちっぽいけど、まぁ、見てないからわからないです。4月に出るそうです↓

Pop Skull (2007)

アダムさんの過去作品は他にもあるが、これがおもしろそうなので、いっちょういってみるかと思案中であります↓

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原題: 24 Exposures
制作年: 2013年
制作国: アメリカ
公開日: 2013年8月4日 (カナダ) (Fantasia Film Festival)
2013年9月16日 (アメリカ) (LaDiDa Film Festival)
2014年1月24日 (アメリカ)
imdb.com: imdb.com :: 24 Exposures

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