2010/9/2 (Thu) at 1:20 pm

映画|ゴースト・オブ・チャイルド|The Haunting

善良家族が古い屋敷に引っ越してきたら、オバケが出てきてびっくりするスペインのホラー映画。フランコ軍事政権時代の奇跡話/陰惨な教会スキャンダルを暴くオカルトミステリー。アナ・トレントフランシスコ・ボイラエクトル・コロメ。監督エリオ・キロガ。Fangoria Frightfestの1本。2009年。

ゴースト・オブ・チャイルド / The Haunting DVDDVD画像

冒頭プロローグ。古い記録映画風の映像が出てくる。ひとりの女性がどこかの部屋から救出されるシーンが出る。救出された女(マリア・アルフォンサ・ロッソ)は、教会が運営するサナトリウムに運ばれて入院する。それ以来、彼女はずっと昏睡中だったが、ある日、パカッを目を覚ます。

ここから現在。

彼女はやがて体力を取り戻し、健康になる。そこにミゲルと名乗る神父(エクトル・コロメ)がやってきて「このサナトリウムは取り壊されるのです。あなたはどこか行く場所がありますか?」と質問する。女性は「家に帰ります」と答え、歩いて出ていく。さみしそうです。

女性は去り際、なにかを落としていった。それを拾ったミゲル神父は青くなった。それは映画フィルムのきれっぱしのようなもので、ドクロのマークがあった。

ところかわって、こちらはしあわせそうな家族のみなさん。フランチェスカ(アナ・トレント)は小児科の医者で、同じく医師の夫(フランシスコ・ボイラ)がいる。彼女は赤ちゃんを産んだばかり。赤ちゃんの上にお姉ちゃん(小学生くらい)もいて、平凡な4人家族という雰囲気のみなさんは、郊外の家に引っ越してくる。そこはとても古くて大きなお屋敷。

不動産屋の話によれば、この家の家主は教会である。プラダ司祭という教会のえらいさんが、ながらくこの家を使っていたのだが(定期的に訪れてなにかやってたらしい)、さいきん彼が死去したので、教会は貸し家にすると決めたということで、プロローグの昏睡女性となにか関係がありそうです。

家族はここで新しい生活を始めるのであるが、やがてフランチェスカが狂気ぢみてくる。へんな物音が聞こえたり、少女のオバケが見えたり。夫は大心配になる。彼女のことが心配なのは当たり前だが、赤ちゃんになにかあったらますますたいへんだから。

彼女は最近までなにかトラウマに悩んでいたらしい。心の傷はもう治ったはずだったのだが、また出てきちゃったのだろうか。あるいは、ほんとにオバケがいるのだろうか。夫は「もう10年も経つのだから、いいかげんに忘れなさい」とかいう。この夫婦の過去になにがあったのでしょうか。

後半になると、ミゲル神父がフランチェスカの前に現れ、彼女を救ってくれます。単純なオカルトものかなと思わせといて、その先には、とても意外な謎解きがあります。

1940年代フランコ軍事政権時代のスペインで起きた村の奇跡話とその真相、さらに教会の恥部ともいうべきスキャンダル暴露話に発展します。とても陰惨でかわいそうなお話です。

トレイラー動画

The Haunting (2009) trailer

感想

善良家族が大きな屋敷に引っ越してきたらオバケが出てきてウギャー。というよくあるヤツかなと思ったら、その先の展開はじつにおもしろくて、びっくりしました。オカルト映画ですけど、謎解きミステリー要素がたくさんあります。難解ということはありません。映像を見て台詞を聞いていればわかります。でもSyfyのテレビ映画みたいなもんすかというノリでよそみをしていると、置いていかれると思う。いろいろと細かい伏線が配置されていますから。

冒頭の記録映画風のヤツは『No-Do』という題名でした。タイトルロゴがジャジャーンと出てきて「No-Doはみなさんに真実をお伝えするニュースとドキュメンタリの新しい媒体です!ついにはじまりましたよー!」てな調子の陽気なナレーションで始まるヤツなんだけど、この『No-Do』ってのは、フランコ政権時代のスペインにおいて、政府がつくったニュース/ドキュメンタリの製作会社です。政府のプロパガンダ目的のニュース社だったですが、厳しく検閲をする一方、優れた映画に資金援助をする等、映画産業の振興に寄与したという功績もあったらしい(http://ja.wikipedia.org/wiki/スペインの映画)。

というわけなので、スペインのひとたちにとっては「あ、あの時代か!」とすぐにわかるものなのですね。『No-Do』が1942年設立と知っていれば「女性は60年くらい昏睡してたんだな!」と推測できるってわけです。

この『No-Do』ってのは、その後も重要なワードとして出てきます。だからよく覚えておきましょう。

そもそもの話、この映画の原題が『No-Do』です。制作者としては、当時の権力の暴露話という意図があるんでしょうけど、それだとスペイン以外の国のひとにはよくわからないので別のタイトルになったのでしょうけど、『The Haunting』てのはちょっとなー。タイトルで損してるかんじがする。レンタルの棚に並んでいたらタイトルでスルーしちゃうひとが多いんじゃないかな。もったいない!タイトルから受ける印象よりもずっとおもしろいよ。

『バチカンスキャンダルの暴露』と上に書きましたが、それはなにかというと、大昔に起きた『奇跡』に関するウラ話です。冒頭の昏睡女性は奇跡事件の関係者で、重要な証人です。フランチェスカ家族は元々は無関係なんだが、彼女には『見えないものが見える能力』が備わっていた。だからへんなものが見えてしまい、この家の過去がバレてしまった。それをひも解いていったら、びっくりすることがわかってしまったよというお話です。

彼女の狂気に関して意外なネタが後半で明かされますが、勘のいいひとなら早い段階で気づくかなとおもう。エンドロールでオチ的な映像が出ます(これが『No-Do』製作)。それを観ると、なるほどー、そうだったのかあ、と納得します。

謎解きの伏線があちこちに仕込まれているんだけど、こういう映画をだれかといっしょに見るとですね、「ここはだいじなトコだぜ。おぼえておくんだぞ」とかいっても、ぜんぜん覚えないひとっていますよね。「あー、わたしゃオバケが見れりゃいいの!はやくオバケでないかなー。オバケ、オバケ!」などというヤツといっしょに観るとたいへんです。

ぜったい最後のへんになると「いまのナニナニ?どういう意味?」とかいって質問攻めにしてきやがるので、しばしばポーズボタンを押し「あのオッサンはどーのこーの」と説明させられます。「あー、そうかあー。なるー」とかいって「おもしろい映画だねー。見てよかったねー」なんていうの。「最初に注意しとけっていったでしょーが!」とかいってもぜんぜんだめ。「でも、あんたが教えてくれるから、わたし、こまらないヨ」「まったくもう!」「うっふん」「しょーがねーなー」「きゃは」「こいつぅ」「テヘ」てな調子でハッピーになれると思うんで、まぁ、楽しんでください。

アナ・トレントがなつかしい!

ところで、主役を演じたアナ・トレントは、私の中では『ミツバチのささやき』『カラスの飼育』で止まっていたのでとても懐かしかったです。当時、私、映画館に何度も見にいったよ。目元の雰囲気があのときとかわらないですね。あのときの少女かーと思って見てると、自動的にフランケンシュタインのアレが思い出されてきて、あのときの台詞も思い出されてくるもんで、それがこの映画に興趣を与えているというような相乗効果がかんじられ、よかったなあとおもいました。

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The Beckoning
邦題(カタカナ): 『ゴースト・オブ・チャイルド』
制作年: 2009年
制作国: スペイン
公開日: 2008年11月10日 (アメリカ) (American Film Market)
2009年2月7日 (ドイツ) (European Film Market)
2009年3月7日 (スペイン) (Las Palmas Film Festival)
2009年6月12日 (スペイン)
2009年7月1日 (ドイツ) (DVD)
2009年7月24日 (韓国) (PiFan International Film Festival)
2009年9月1日 (アメリカ) (Shriekfest Film Festival)
2009年9月17日 (ドイツ) (Oldenburg International Film Festival)
2010年1月31日 (フランス) (Gérardmer Fantasticarts Film Festival)
2010年8月6日 (アメリカ) (Video On Demand)
2010年9月28日 (アメリカ) (DVD)
2010年10月5日 (フランス) (Toulouse Cinespaña Film Festival)
imdb.com: imdb.com :: No-Do
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